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ワンポイント・ぜみなーる

「ダムができるまで」の概要


地球上の水はたえず循環していて、海や陸上から蒸発した水が雲となり、雨や雪となって地上に降り注ぎ、再び海などへ戻ります。
私たちは通常、この水の循環の中で河川や湖沼など地上に降り注いだ淡水を利用しています。
世界的に見て、わが国の降水量は比較的多いと言われます。しかし、山が多く地形が急で降った雨がすぐに海へ流れ出してしまうことや、梅雨、台風などの時季に降水が集中するなど季節的な偏りがあることから、川を流れる水の量が大きく変化します。
そのため豪雨の時には洪水が起こり、雨が少ないと渇水が起こりやすくなっています。



     

そこで、洪水のときの雨を貯留したり、貯留しておいた水を渇水のときに流すことにより安定した川の流れを確保し、洪水を防ぎ、水の利用をしやすくするためにダムがつくられます。ダムの落差を利用して、ダムから流す水で水力発電をするためにもダムがつくられることがあります。
このようなダムがどのようにして計画され、つくられていくかについて、「ダムができるまで」として数回に分けて掲載します。
なお、ここでは様々な検討を経て、「ダム建設を選択」したとの前提のもと話をすすめます。
また、ここで説明するダムは、国や、水資源機構が建設する複数の目的を持った「多目的ダム」を対象にしています。

(財)ダム水源地環境整備センター
ダム広報センター

「ダムができるまで」・・・隔月6回に分けて紹介します。

第1回:「ダムができるまで」(2月号)
第2回:「予備調査」の説明(4月)
第3回:「実施計画調査」の説明(6月)
第4回:「実施設計・補償及び水源地域対策・準備工事」の説明(9月)
第5回:「建設工事」の説明(11月)
第6回:「ダムの管理」の説明(2月)

第6回「ダムの管理」の説明


 今回は、ワンポイント「ダムが出来るまで」の最終回、「ダムの管理」について説明します。ダムは、人が管理することにより所期の効果・機能が発揮されます。 また、ダム管理は重要な仕事である一方、自然・気象を相手にした難しい仕事でもあります。 ここでは、国土交通省所管の多目的ダムをイメージしてダムの管理を説明します。


1.ダムの工事が終わると試験湛水を行います


 ダムの建設が終わると「試験湛水」により安全を確認します。試験湛水は、ダム本体の安定性や水漏れ、貯水池周辺の地滑りなどがないか試験的に水を貯めて確認します。 ダムの工事中、川の水を迂回して流していた仮排水トンネルなどを締め切り、ダムに水を貯めます。水を貯め始めたら、ダムや基礎地盤及び貯水池周辺の地山に異常がないか確認を行っていきます。


試験湛水開始前の仮排水ゲート閉塞


 試験湛水では、計画時に定めた洪水時の最高水位まで水位上昇させます。試験湛水時には通常見られない水位まで湛水し放流が行われます。そのため、この数少ないチャンスを見学するため多くの方が来訪します。
試験湛水を行う前には、何日で満水になるか過去のデータから予測計算し、目安を立てますが(通常1〜2年程度)、降雨次第ですのでなかなか思うようにはいかないようです。試験湛水中であっても、貯水するときは下流河川の環境や水利用者へ影響しないように流入量から必要な流量を下流に流しながら残りを貯め込みます。
  試験湛水中の点検は、ダム本体の変位、ダム本体及び基礎地盤等からの漏水量等の他、ゲート及びダム本体等の観測用計器の作動状況、貯水池周辺の崩落や地滑り等予め定められた湛水計画書に基づき行われます。 試験湛水で安全が確認されると、本格的なダムの管理に入ります。

試験湛水における洪水時最高水位の放流状況



2.ダムの管理は、「ダム操作規則」などにより行われます


 ダムの管理は、建設時の目的が達成されるよう適切に管理しなければなりません。そのため、ダムの操作・管理の仕方について操作規則等(操作規則、施設管理規程、操作規程)を定め、これに基づきダム管理所が管理しています。
 この操作規則等は、ダムの適用される法律により以下のように区分されています。
  • 特定多目的ダム法のダム・・・法31条による操作規則
  • 水資源機構法によるダム・・・法第16条による施設管理規程
  • 河川法によるダム・・・・・・法14条による操作規則

 なお、河川法の許可を受けて建設する発電専用ダムや利水ダム等は、法47条による操作規程を定めて、これにより管理します。



3.ダムの管理でよく使用する用語と定義

  • 流入量(m³/s)・・・ダムに流れ込む流水
  • ダム流下量≪放流量≫※(m³/s)・・・ダムから下流に流す量
  • 洪水量(m³/s)・・・ダム管理所が洪水警戒体制に入る流入量、洪水調節の開始流量。洪水量は、一般的に下流河川で一般災害の生じない無害流量等に相当するダムへの流入量をもとに決定。
  • 防災操作≪予備放流、洪水調節≫・・・大きな出水が予測された場合にダムの空き容量(洪水調節容量)を確保するため水位を低下するための放流≪予備放流≫、大きな出水をダムにため込んで川の流量を低減するための放流≪洪水調節≫
  • 平常時最高水位≪常時満水位≫・・・洪水調節時を除き超えてはならない最高の水位
  • 洪水時最高水位≪サーチャージ水位≫・・・洪水調節時に一時的に貯留することによって達する最高水位
  • 洪水貯留準備水位≪制限水位≫・・・・洪水調節時を除き超えてはならない水位
  • 洪水期・・・これまでのデータから洪水が多く発生している期間。ダム毎に定められている。
  • 非洪水期・・・洪水期以外の期間

※≪≫内の名称は、用語等の見直し前に使用していた用語
※ダムの用語についてはこちらをご覧下さい>>トピックス「ダム操作に関する用語等の見直しについて」


一般的なダムの貯水位・容量関係


以下に、ダム管理所の主な仕事の内容を述べます。


4.ダム管理所の主な仕事


 ダムの管理所は、日頃より観測データ等の情報収集、洪水時には洪水調節、渇水時には用水供給、定期的なダム本体や放流設備等の点検・整備、修繕・改良、貯水池や周辺の巡視等の仕事を行っています。

(1)観測データ等の情報収集・分析
 ダムの安全性を確認するための漏水量・揚圧力等の計測、ダムの操作等に必要な貯水位や雨量等の観測及びこれらのデータと気象予報データ等を収集・分析します。また、これらの観測データやダム操作に関するデータは、広報やダム管理年報として保存するため所定の書式に整理します。

 

揚圧力観測

 

観測データの分析



(2)洪水時のダム操作(洪水調節)

 ダムの洪水調節操作は、一般に次のような手順で行われます。

ダムによる洪水調節(ハイドログラフ)

●洪水警戒体制
 ダムへの流入量がダム毎に定めてある「洪水量」以上になると洪水時の操作(洪水調節)を開始します。
管理所では、台風や前線などにより洪水が発生し気象情報や雨量観測値などから洪水量以上の発生を予測した場合は、管理所職員を招集し洪水警戒体制に入ります。自然現象を相手にしているため、夜間、休日を問いません。
 その上で、気象情報や雨量観測地等からダムへの流入量を予測し放流量を定め、ゲート操作の前に関係市町村等に連絡すると共に、放流警報装置や警報車よるサイレン等で下流沿川住民にダムからの放流を予告します。
 

放流警報版による周知 

 

警報巡視

●洪水調節開始
 それらの手続きとダム下流の安全を確認した後に、ゲートを開き流入量の一部を放流します。ゲートの操作は、一般に10分間の貯水位の変化から流入量を求めて、放流量を決定し実施します。
 流入量に対していくら放流するかは、ダム毎の操作規則に洪水調節方法が定められております。

洪水調節方式の例

●特例操作
 ダムの洪水調節容量は、河川計画上定めた洪水を対象に決められています。従って、この計画を超えてより大きな洪水の場合は、洪水調節容量が不足するおそれがありますので、操作規則通りの洪水調節が出来ません。そのため、下流住民等への警報を行った上、放流量を流入量と同量まで徐々に増していきます。
 計画を超える大きな洪水でも、ダムへの流入量を超えてダムから放流することはありません。

計画規模を超える洪水への対応

【適応操作】
 なお、下流河川に被害が生じる恐れがある洪水が発生し、ダムの容量に余裕がある場合は、今後の降雨量が予測出来る範囲内で、上記の操作規則で決められた洪水調節方法を変更し放流量を減じて下流の被害を軽減する操作が行われることがあります。(H23年7月洪水における中国地方土師ダム等の事例、H23年9月洪水における東北地方三春ダムの事例等)
 洪水は、降雨の時間強度、総量と継続時間によりその大きさが変わります。通常は雨の降り方が予測できないため、流入量に対する一定の調節ルールを定めて洪水調節を行います。現在降雨予測は、まだまだダムの操作に利用できるほど精度は上がっていませんが、洪水によっては上記のような操作が出来る場合がありますので、今後の研究が望まれます。

適応操作イメージ


水道用水


 

(3)河川の正常な機能を維持又は利水(水道用水等)のための操作及び水位維持の操作
 ダムは、下流河川の正常な機能を維持するため、水道用水やかんがい用水等に必要な流量を確保するために、自然の流況だけでは不足する場合に、流入量にダムの貯留量の水を加えて、ダムから水を供給します。
 このような放流操作の他に、ダム毎に定められた平常時最高水位、洪水調節準備水位を超える恐れがある場合は、これを越えないように流量を定めて放流します。このような操作を、水位維持操作といいます。





(4)ダム管理設備の点検・整備、貯水池巡視
 ダムの機能を正常に稼働させるために、ダム本体及びその計測機器、放流設備及び操作設備、警報設備、水位流量観測設備などの日常点検と整備が重要です。
 これらの点検は、点検整備及び定期検査等のマニュアル等によりダム毎に基準等を作成し、実施されています。


     
 

堤体内点検

 

放流設備点検

 

サイレンスピーカ点検


(5)ダム本体、放流設備等の修繕改良

 大規模な公共施設としてのダムを長く適切に利用していくために、放流設備等について腐食を防ぐための塗装を行うなどの予防保全的修繕と、改良更新などの事後改良を行っていきます。

放流設備修繕(分解修繕)


(6)貯水池周辺の法面対策、流木処理、碓砂対策

 貯水池の機能を健全に守るため貯水池に接する法面を巡視し、豪雨等により法面が崩壊した場合、大規模な崩壊とならないようの法面対策を行います。
 また、洪水時には、洪水と同時に大量の流木が貯水池に流れ込みます。この流木は、ダムがない場合下流河川の橋などに被害を与えていたものです。流木が貯水池内滞留するとゲート等が損傷する恐れがありますので、洪水後にかき集めて引き上げ、再利用や廃棄処理を行います。
 貯水池には、洪水時などに土砂が流入するので、概ね百年分の流入土砂量を貯めるだけの容量を見込んでいます。しかし、大規模な出水などにより、計画を超えて碓砂した場合、貯まった土砂を掘削して搬出したり、トンネル等で下流に流したり、所定の有効貯水容量を確保するための碓砂対策を行います。



 

法面対策 

 

流木かき集め



堆砂対策のイメージ


(7)貯水池水質対策
 河川水がダムに貯水し滞留することにより、水温変化、濁水長期化、富栄養化の問題が生じる場合があり、これらの影響を軽減するため各種水質対策が行われます。


●水温変化対策

 貯水池は表層が高温、低層が低温となります。自然の流れと異なった温度の水を流すと、農作物や魚類に影響を与える場合がありますので、貯水池を混合させる装置による攪拌や、選択取水設備による取水位置の選択が行われ、ダムへの流入水温と同程度の水温の水を放流します。

水温変化

 

●濁水長期化防止対策
濁水の長期化は、洪水時にダムに流れ込んだ濁水が貯水池に滞留する現象で、ダムからの放流水が長期間濁水状態になることがあります。 これは流域の崩壊地からの濁質の流入、沈降しにくい土質、貯水池の回転率が小さい場合などが原因で生じます。
濁水の長期化を防止する為の対策としては、選択取水設備による清水の放流、ダム上流からバイパス水路を設け清水放流などの方法があります。

選択取水

●富栄養化対策
 上流域から窒素や燐等の栄養塩類が川の流れとともにダム湖に供給されていくと、高富栄養化状態となり、光合成により植物プランクトンの生産量が増加します。富栄養化が進むと、アオコの発生による景観障害や水道水にカビ臭などの影響がでる場合があります。 この対策として、藻類等を光の届かない深層へ移動させることにより増殖を防止したり、流動制御フェンスで出水時の栄養塩の富んだ水を深層部に導入する等の対策をとります。

富栄養化現象の発生要因のイメージ


5.ダム管理における近年のニーズに対応した施策の事例


(1)ダムの弾力的管理による流況改善
 洪水調節に支障を及ぼさない範囲で、洪水調節容量の一部を用いて流水を貯留し、これを適切に下流に流すことによりダム下流の河川環境の整備と保全等に資するなど弾力的管理を行っています。
 この取り組みは、平成9年より開始し、これまで多くのダムで下流河川の環境改善が図られています。平成22年度は22ダムで実施されました。


【弾力的管理の例】

・フラッシュ操作
川のよどみ水を押し流し、河床砂礫等の付着や藻類の剥離・更新を図るため短時間、平常時より多い水量をダムより流します。

 

・維持流量の増量操作
平常時よりダムから増量して放流し、河川景観の向上や魚類の遡上・降下をし易くします。

 

(2)ダムの見える化
 日頃目につかないダムの操作やダムの操作による効果等を適切にわかりやすく住民に伝えるため、国土交通省では次のようなことを実施しています。


 


 



 ・参考文献:ダムの管理例規集〈平成18年版〉 [単行本]
  国土交通省河川局河川環境課 (監修), ダム水源地環境整備センター (編集)

 今回で「ダムができるまで」全6回を終わりました。今回の「ダムの管理」は少し長くなりましたが、ダムの一番重要なところです。全般的に広く浅く書きましたので、もっと詳しく知りたいところは参考文献やダム管理所ホームページなどをご覧下さい。
 ご愛読ありがとうございました。ダム水源地に関する情報をお待ちしております。

編集局S




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