日本版DMO(地域連携DMO)の推進について

2018.10掲載
公益財団法人 宮ヶ瀬ダム周辺振興財団
企画振興課長 佐藤 正五

1.これまでの財団の取り組み

 私どもの、「宮ヶ瀬ダム周辺振興財団」は、宮ヶ瀬ダムの建設に併せ、平成4年10月に設立され、満26年を迎えようとしています。
本財団の設立目的である「県民の水源環境に対する理解を促進すること。宮ヶ瀬湖周辺地域の活性化を推進することにより、都市と水源地域・人と自然の交流共存による宮ヶ瀬湖周辺地域の振興と発展に寄与すること。」を受け、これまで宮ヶ瀬湖周辺に整備された国や県の施設の管理運営を受託するとともに、四季折々に地域の自治体や関係団体と連携を図りながら年間500を超えるイベントを実施し、年間167万人の来訪者を集めることで、水源地域の理解や地域の活性化に貢献してきました。

<受託施設の一部>
▲宮ケ瀬湖畔園地 ▲みやがせミーヤ館(ワンストップサービス) ▲宮ケ瀬湖カヌー場

<イベントの一部>
▲みやがせフェスタ春 ▲ペットボトルロケット大会 ▲クリスマスイルミネーション

2.日本版DMO法人への登録

 前述したとおり、本財団は宮ヶ瀬ダムの誕生とともに設立され、宮ヶ瀬湖に隣接する神奈川県愛甲郡清川村と同郡愛川町及び相模原市緑区(旧津久井町)中心に地域の活性化・振興策を実施してきましたが、

  • 圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の整備が進み、相模原インターチェンジから20分とアクセスが良くなったこと。
  • リニア中央新幹線の関東車両基地が近隣に整備予定されたこと。
  • 2020東京オリンピック・パラリンピックの開催を見据え、カヌー等のスポーツ熱の高まりが期待されること。

といった宮ケ瀬湖周辺を取り巻く環境の変化が現れてきたところ、折しも、観光立国を進めるという国策の流れの中で、観光庁が平成27年に日本版DMO登録制度を創立しました。

日本版DMOについては観光庁のホームページ(http://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000053.html)でその意義や役目について詳細に書かれておりますが、私どもは「観光を切り口とした地域活性のための舵取り役」になると理解し、この制度に、一早く申請を行い、平成29年11月28日をもって、「日本版DMO(地域連携DMO)法人」として登録されました。

<日本版DMO対象地域>
 神奈川県愛甲郡清川村、神奈川県愛甲郡愛川町、厚木市の飯山地区・七沢地区、相模原市緑区の一部(根小屋、長竹、青山、鳥屋)

3.日本版DMOとしての取り組み

 DMO法人として、具体的な地域連携事業を進めるにあたり本財団が事務局となって、平成30年度から「宮ヶ瀬湖周辺DMO推進ネットワーク会議」を立ち上げました。参加メンバーは、当財団が日本版DMO法人として申請する際に「連携する事業者」として捉えた事業者44団体です。具体的には各地域の観光協会・商工会・NPO法人・公共施設の指定管理者等の事業者や当財団の出捐団体等です。平成30年7月31日、記念すべき第1回目の「宮ヶ瀬湖周辺DMO推進ネットワーク会議」を開催しました。冒頭、当財団の和田久理事長はあいさつのなかで、これまでの財団の役割、地域との関わり、そして日本版DMO法人として、これからの地域との関わりについて明確なビジョンを表明しました。以下、あいさつ概要を掲載します。

<和田久理事長あいさつ概要>

 宮ヶ瀬ダムは規模としても全国有数であるが、もうひとつの特徴は県立自然公園でもあるここ宮ヶ瀬湖畔園地をはじめとし、県立宮ケ瀬湖カヌー場、県立あいかわ公園、相模原市の鳥居原園地といったダム周辺施設も一体としてセットされていることだ。このようなダムは全国にも例がないであろう。

 平成4年に国や神奈川県、関係市町村などの連携のもと、私ども宮ヶ瀬ダム周辺振興財団が誕生し、これらの資産の運営を行ってきた経過がある。
 こういった先人の努力により、ダムにおける観光客数日本一であるとともに、一昨年の日経新聞が行った観光ダムランキングでも宮ヶ瀬ダムが日本一となった。

 ダムが水源としての機能を果たすだけでなく、ダム建設によって地域の経済や地域のコミュニティがいったんリセットされてしまったとき、移転された方々を含め地域が再び力を盛り返し活性化し、観光客の方にも来ていただき地域全体を盛り上げていくことが当初からの構想であったと理解している。

 私ども財団は宮ヶ瀬湖周辺の公共施設の受託事業をメインとしているが、近隣市町村や団体の皆さんと力を合わせて、より多くの方々に来訪いただくように年間500本ものイベントを実施し、この地に足を運んで頂くための取り組みを重ねてきた。

 奇しくも、昨今、観光立国ということで、観光庁が市町村や官民の垣根を越えて、地域ごとにマネージメントを行う法人を指定するという、日本版DMOという制度を設立した。

 私ども財団はこれまでも市町村の垣根を超えた活動を行ってきた訳であるが、この機会に応募し、昨年の11月28日に観光庁長官から地域連携DMO法人として指定を頂いた。エリアとしては、清川村、愛川町の全域、厚木市は七沢地区・飯山地区、相模原市は相模原インターから西の地区を含有し、市町村の垣根を越えて、また官民の垣根を越えて地域の活性化に向けた取り組みを進めていくこととなった。

 今年度は初年度であり何をやるかが大事であるが、これまでは例えば市町村の観光セクションが補助金等を活用してイベントを実施してきたが、昨今の経済状況からも補助金に頼った運営では先が見えているし、民間だけでやっても発展性に加速がつかない。結論から言うと、奥の手がある訳ではない。DMOに指定されたからと言って補助金が出る訳でもない。市町村ごとにしかできなかったこと、民間のみ、役所のみでやってきたことを、皆さんで連携して仕組みを作っていき、より多くの方に来ていただく仕掛けを作っていきたい。

 昨今、ダムブームと言われているが、例えば、バスツアーなどが宮ヶ瀬ダムを訪れる時代になっている。これから皆さんと相談しながら宮ヶ瀬湖周辺エリアに、一日、遊べる仕掛けを作っていきたい。観光放流を見たら、昼食を取り、地元の野菜を買って温泉に入って帰って頂く、このような周遊性のある流れを作ることが重要である。今年度はパイロット事業として試験的に、仮に失敗してもいいから何かをやっていく。その中で改善しながら継続していく。具体的な取り組みを一歩一歩進めていく。このような取り組みを皆さんとやっていきたい。

 DMOは、各市町村、各団体、各商店街の事業を手助けする組織ではない。それぞれが自助努力した上で、周りのエリアと連携する際に私どもがコーディネイトするとともに、皆さんが話し合う場づくりを提供していきたいと考えている。

 このネットワーク会議の席上で、平成30年度の地域連携事業は、パイロット事業として「地域クーポン券の発行」と「旅行ツアーの開発・企画」を実施することとしました。

 ネットワーク会議の下には、更に作業を行うワーキング部会を設置し、現在、地域クーポン券について詳細な詰めの作業にかかっているところです。

▲地域クーポンのイメージ ▲ワーキング部会の様子

4.今後の取り組み

 日本版DMOとしての活動は始まったばかりであり、また、今後、5年、10年と長く積み重ねていくことでその効果が確固たるものになると考えています。現段階で、日本版DMOの効果や実績を述べることはできませんが、取り組みを始めて実感するのは、メンバー同士の一体感と、DMO法人である私ども財団への信頼感です。団体や企業等による活発な意見交換の中で、地域全体の活性化に向けての前向きな発言が目立つからです。

 これまで、地域ごとや事業者同士の中でも「連携」というキーワードは幾度となく交わされてきたはずではありますが、官民の垣根や市町村の垣根を越えた地域連携という手法に、そしてその舵取り役である私ども財団にも大きな期待を頂いていることは間違いないと思います。
「観光を切り口とした地域活性のための舵取り役」として、一歩一歩着実に、前に進めてまいりたいと思います。


宮ヶ瀬湖周辺情報はこちら
「都心から一番近いオアシス ぐるり宮ヶ瀬湖」
https://www.miyagase.or.jp/index.html