第24回「地域に開かれたダム」全国連絡協議会現地交流会

2018.11掲載
水源地環境センター名古屋事務所
所長 石原 篤

 平成30年9月27日~28日に表題の交流会が長野県伊那市の市役所多目的ホール及び美和ダムで開催されました。協議会参加市町村の他に、天竜川沿川からも15市町村が加わり総勢100余名の参加者でした。本年9月は秋雨前線と台風の影響で雨が続く日が多い月でしたが、次の台風が日本を覗いつつ秋雨前線を本土の南海上に寄せたことから、この日は一転して良い天気に恵まれました。現場視察が行われた28日の北沢峠付近では、年に数回しかないという雲がほとんど無いくらいの良い天気でした。

 ※「地域に開かれたダム」とは (国土交通省HP)
  http://www.mlit.go.jp/river/kankyo/main/kankyou/hirakare/index.html

▲挨拶をされる白鳥伊那市長

 会長である白鳥伊那市長の挨拶に始まり、引き続き国土交通省水管理・国土保全局水資源部の佐藤部長と国土交通省中部地方整備局河川部の児玉部長が挨拶され、当水源地環境センター森北理事長も挨拶しました。

 続いて事例発表では、国土交通省中部地方整備局天竜川ダム統合管理事務所の國村所長から「ダムの役割(働き)」として、洪水調節で下流の水害を防ぐとともに、農業用水の供給の安定化や発電に加え、ダム見学などで地域の観光資源の一つとしての取り組みを進めていることが報告されました。

 引き続き、 高遠 たかとお 郷土歴史研究会の矢澤様から「映像でみる美和ダムの歴史」と題して、多くの写真を用い、美和ダム建設に至る当時の実情から、ダム工事中、完成直後の昭和36年災害(36災)について周辺地域の変遷を交えた発表がありました。矢澤様は御年90歳でありながらPCでの説明資料(100頁)などもご自分で制作され、現在でも歴史博物館にて説明されるなど、精力的に行動しておられるそうです。

 次に、 三峰川 みぶがわ みらい会議の織井代表から「三峰川みらい会議の取り組み」として、三峰川の保全などを目的に策定された三峰川みらい計画を実行する住民組織の設立の経緯や河川内に 蔓延 はびこ るアレチウリなどの外来種駆除などの活動報告がありました。

 次に、ダムライター・ダム写真家の萩原雅紀様から「ダムの“再発見”~ダムとダム好きの20年~」として、ご自身がダム好き、ダム写真家、ダムライターになった経緯や、ダムカードなどの盛り上がりなど昨今のインフラ観光ブームのうち、ダムについては、今回の「地域に開かれたダム」事業がきっかけになっているなどの話と、ダムファンでなくても魅力を感じるダムの楽しみ方を話していただけました。

▲左から國村所長、矢澤様、織井代表 ▲ダムライター・ダム写真家 萩原雅紀様

 これらの報告の後、参加者は美和ダム及び現在整備中のダム湖内堆積土砂の対策施設の現地視察に行きました。

 美和ダム流域では土砂生産が非常に多く、ダム完成直後に発生した36災や昭和57・58年などに発生した大洪水により大量の土砂が貯まってしまったことから、ダム湖に流れ込む土砂をダム湖を迂回して下流に流す土砂バイパストンネルが設置されています。なお、ダム湖に流れ込む土砂のすべてをバイパスできないため、湖内対策施設として、バイパストンネルの上流側にプールを設ける工事の最盛期でした。そこに既に貯まった土砂を含めて非洪水期に貯めておき、洪水時にトンネルで下流に流すとのことでした。
 美和ダム以外で土砂バイパストンネルが設置されているのは、長野県、兵庫県にそれぞれ2ダム、奈良県に1ダムと、国内では非常に珍しい施設となっています。

 現地見学の後は、美和ダム下流にある高遠ダム湖畔の高遠さくらホテルで交流会懇談会が行われました。お忙しい中で国土交通省中部地方整備局の勢田局長も出席されて、最近のダムなどの状況について話をいただきました。次に、弦楽四重奏の「いーなちゃんカルテッド」の演奏があり、出席者の方々も和んでいろいろな情報交換をして場が盛り上がりました。
 加えて、伊那市とホテルが共同開発し、翌日から期間限定で提供されることとなった「高遠ダムパフェ」のお披露目と試食も行われ、美和ダムの地元である伊那市のダム活用の一端を感じることが出来ました。

 また、高遠ダムでは、時期毎に各色のライトアップをされているとのことでしたが、この日は青と緑でした。真っ暗な中でのゲートへのライトアップも幻想的でした。

 次の日は、ダム湖上流の山地の状況などを見学するため、三峰川の支川の 黒川 くろがわ 小黒川 おぐろがわ 沿いに流域の奥に進み、南アルプスの北端に近い甲斐駒ケ岳や仙丈ヶ岳への登山口のある北沢峠に行きました。白鳥市長から地形・地質や植物・樹木などの説明をしていただきながら崩壊地などの状況を視察しました。途中、北アルプスの槍ヶ岳などが見える天気に恵まれた一日でした。

 美和ダム周辺では、これら山岳景観を楽しむことができるほか、三峰川本川上流部にはパワースポットと言われる 分杭 ぶんぐい 峠もあります。四季折々の景観やグルメなどを体験しに、水源地ネットの読者の皆様もこの地を訪れてみてはいかがでしょうか。
 因みに、北沢峠へ行くにはマイカー規制のため自家用車は途中の仙流荘で市営の南アルプス林道バスに乗り換えて行くことになります。山梨県側からも北沢峠行きの市営バスがあるそうで、乗り継いで南アルプス市に行けるとのことでした。

歌宿 うたじゅく から望む 鋸岳 のこぎりだけ