水源地を旅する 第一弾「大井川鉄道井川線を旅する」


■はじめに

 今回は、静岡県の一級河川大井川の上流域を大井川鉄道井川線で旅するルートをご紹介します。散歩が好き、渓流が好き、ダムが好き、温泉が好き、電車が好き、カメラが好き、いろいろな趣味を持った方に幅広くオススメするコースです。一部登山道を歩くところがありますが、健康な方であればスニーカーを履いていればそれほど問題にはならなさそうです。全コースを回るには丸1日かかりますが、車やバスを用いたりコースの一部だけを回ったりすることで短時間でも観光できます。時間の余裕に応じて、自分なりの大井川水系の旅を楽しまれると良いでしょう。


■今回のスタート地点、千頭駅までのアクセス

 スタート地点は大井川鐡道井川線の千頭駅。車の方は新東名高速島田金谷ICから北に車で40キロほどです。道幅は広いですが、山道ですので気をつけてください。東京方面からの方は、カーナビで検索すると新東名静岡SA(スマートIC)から国道362号線を通るルートを案内されることがあります。国道362号線は、場所によってはすれ違いも難しい峠道ですので慣れている方以外にはあまりオススメできません。電車で行く場合は、東海道本線金谷駅から大井川鉄道新金谷駅に乗り換え、大井川鉄道本線を利用してください。大井川鉄道本線にはSLも走っており、時間のある方は千頭駅まで電車でアクセスするのもオススメです。

 千頭駅には駐車場はありませんが、すぐそばの道の駅「音戯の里」(A)[本稿の記号(A)~(Q)は地図中の記号に対応]の駐車場が利用できます(無料)。千頭駅周辺には品質の良さで有名な川根茶、ここでしか買えない大井川鉄道グッズなどお土産が多数ありますので、帰りに周辺を散策してみるといいと思います。【地図】


■大井川鐡道井川線に乗ってみよう

 千頭駅(B)からは、大井川鉄道井川線(南アルプスあぷとライン)に乗って出発です。1日に5本しか走っていないので、行くときには必ず事前に時刻表を確認しましょう。場合によっては、並走する路線バスを利用するのもいいかもしれません。井川線は観光路線の意味合いが強くスピードは遅いです。奥泉駅まで約30分、閑蔵駅まで1時間半かかりますが、路線バスを利用すると、それぞれ1/3の時間で移動することができます。一方、鉄道の車窓からは、時間のロスを補って余りある絶景を楽しむことができます。
電車、バスの時刻表はこちら

 私は千頭駅から110分、終点の井川駅まで鉄道に乗って行きました。

朝、電車も出発準備中です

 かわいい車体!(この写真は、千頭駅ではなく途中のアプトいちしろ駅で撮影)

 途中、絶景のオンパレードです。この赤い橋も大井川ブルーに非常によく映えます。

 そして、この路線のハイライトは、こちら。アプトいちしろ駅(C)から長島ダム駅までの動画をご覧ください。トンネルを抜けると長島ダムの絶景が突然現れます(D)。

 長島ダムを、この角度で眺められるのは井川線ならではです。長島ダム駅【地図】では下車せずこのまま乗り続けます。終点の井川駅の直前では、井川ダムをこの角度から見ることができます(E)。この角度は電車ならではですね。

 終点井川駅(F)についたら、一本道を数十メートル下ると井川ダム(G)。戻りの電車の時間まであれこれ見学してみましょう。

 晴れた日はダム湖が非常にきれいに見えます。
井川ダム周辺の散策が終わったら、来た電車でそのまま引き返して、40分ほどで 接岨峡温泉駅 せっそきょうおんせんえき (H)に到着です。


■接岨峡温泉駅から奥大井湖上駅まで歩いてみよう

 接岨峡温泉駅からは、一駅先の奥大井湖上駅まで、途中接岨峡温泉に立ち寄りながらウォーキングを楽しみます。

駅を出たらすぐに踏切を渡ります。

 200メートルほど道を下ると県道に出ます(I)。早道をするならここを右に曲がるのですが、温泉を楽しむために左に曲がります(写真中の2本並んでいる道路のうち左側が県道。そこを手前方向に進む)。大井川の対岸にある接岨峡温泉を目指します。

 200mほど歩くと、橋の手前に天狗石茶屋【地図】(J)があります。お店のおばあちゃんと話していたら、手作りだという味噌をつい衝動買いしてしまいました。帰って味噌汁を作るのが楽しみです。

 そのまま接阻峡大橋を渡ります。

 橋を渡った先の四つ角を左に曲がったところに、接岨峡温泉会館(K)があります。 【地図】

 ここでは、事前に予約すれば長島ダムカレーをいただくことができます。長島ダム直下のしぶき橋、上流側のレインボーブリッジや貯砂ダムなどが表現されており、非常に完成度の高い一品です。

 食後に温泉に入ることもできますので、ゆっくりしていきましょう。

 食事と入浴を終えたら、今度は先ほど来た道を引き返します。接阻峡大橋を渡り終えたら川沿いを下流側に向かって県道を2キロほど歩きます。歩道はありますが、スピードを出している車もあるので歩くときは注意しましょう。途中からは、きつい上り坂となりますが、絶景ポイント目指して頑張ります。

 途中、長島ダムの貯砂ダムを見下ろすことができます。

 さらに歩くと、左に下っていける道が現れますがここは我慢して上り坂となっている県道をそのまま歩きます。

 トンネルの直前で歩行者専用の道を左に曲がりましょう(M)。絶景ポイントはもうすぐそこです。

 100メートル程度進み、「レインボーブリッジ湖上遊歩道」と書いてある標識(N)から下って登山道に入れば奥大井湖上駅に着きますが、そこを下りずに数十メートル先にある絶景ポイント(レインボーブリッジ展望台)(O)に立ち寄ります。

絶景ポイント【地図】からの眺めです!真ん中に見えるのは、奥大井湖上駅。 ここから、電車が通る時間に眺めることができれば最高です。しばらく眺めを楽しんだ後、帰りは先ほどの下りの登山道の標識の場所まで戻り、奥大井湖上駅方面に向かって山道を降りれば駅に着きます(Q)。

山道を下る途中。

 一本道なので迷うことはないと思いますが、途中登山道のような場所や階段もあります。

 奥大井湖上駅の手前、線路の隣を歩くことができ非常に開放的です(P)。高所恐怖症の人にとってはつらいかもしれません。

 奥大井湖上駅からは、千頭駅の電車に乗って千頭駅に戻ります。今回の旅は、これでおしまいです。



■おわりに

 大井川鐡道井川線を利用した旅の一例を今回ご紹介してみましたが、旅の方法やルートは無限にありますので時間や好みに合わせて旅行してみてください。今回ご紹介した場所以外に、近くには寸又峡多様なつり橋群星が美しいスポットなど魅力的な場所がたくさんあります。東京駅からは新幹線を使って片道4時間。それでも行きたいと思える魅力があると私は感じました。

 さらに、もっと時間に余裕がある方は、井川ダムよりもさらに上流にある、畑薙第一ダムまで行くのもいいかもしれません。ただし、電車は井川駅が終点なので、自動車が必要です。

 最後に、家に帰るまでがダム巡りです。千頭駅からもくれぐれも気を付けてお帰りください。

写真・文:ダムライター猪野光太郎(いのっち)


■今回のルート