一般財団法人 水源地環境センター
理事長 森北 佳昭
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
昨年は、台風19号で東日本の71河川140か所で堤防が決壊して甚大な被害が発生しました。ひとつの台風であのような広域多発的な水害となったのは初めてのことと思います。一昨年は西日本豪雨災害、その前年は九州北部豪雨災害と毎年のように激甚な豪雨災害が発生しています。地球温暖化、気候変動の影響が最近特に顕著になってきていると思います。
そのような中で、これまで整備されてきたダムや遊水地、堤防などの治水対策が大きな効果を発揮しました。昭和22年、カスリーン台風により利根川の堤防が決壊して大災害となりましたが、これを契機に利根川の治水対策が鋭意進められました。台風19号はカスリーン台風を上回る降雨量で、利根川の水位も各所で当時の水位を超えて既往最高となりましたが、試験湛水中であった八ッ場ダムは流入してきた洪水のほぼ全てをダムに貯め込んで、ダム下流の吾妻川の洪水を防御し、さらに利根川水系の他のダムや遊水地とあわせて利根川本川の水位を大幅に低下させて堤防の決壊、洪水氾濫を防ぎました。もし、ダムや遊水地、堤防などが整備されていなかったら、カスリーン台風を上回る大災害になっていたのではないかと思います。あらためて治水対策の必要性、重要性を痛感するとともに、このような時世にあって水源地環境センターの使命と役割をしっかり果たしていかなければならないと思う次第です。
昨年12月、虫明功臣、太田猛彦両東大名誉教授の監修により書籍「ダムと緑のダム」が出版されました。本書は、緑のダムとも言われる森林の保水力には限界がありダムの治水機能を代替できないこと、一方でダムも貯水量に限りがありその治水機能に限界があることを示しています。その上で、九州北部豪雨災害や西日本豪雨災害のような水害・土砂災害・流木災害の複合型水災害に対しては、森林と砂防とダムが連携して流域全体での総合的な取り組みとマネジメントが必要であることを訴えています。本書の執筆には当センターの職員も加わっていますが、森林、砂防、ダムの治水面を中心とした機能とその限界を理解する上で有意義な書ですのでご一読いただければ幸いです。
水源地ネットは、今年もダムや水源地域に関するタイムリーな情報や水源地活性化に資する情報を発信していきたいと考えています。皆さまの引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。