一般財団法人 水源地環境センター第20回技術研究発表会 開催

水源地ネット編集局

令和元年11月29日、千代田放送会館(東京)において、一般財団法人 水源地環境センター(WEC)の 第20回技術研究発表会を開催しました。当日の来場者は169名と、多数の方々にご参加いただきました。

冒頭、当センターの森北理事長が挨拶し「台風19号の影響で、各地で堤防の決壊が140箇所に及ぶなど、一つの台風で広域多発的な災害が発生するという、初めての事態となった。その中、八ツ場ダムほか上流部6箇所のダム、渡良瀬遊水地、堤防など、これまで整備してきた治水対策・インフラで利根川の決壊を防ぐことができた。改めて治水対策の重要性を感じた。」との述べました。

基調講演では、国立研究開発法人国立環境研究所 生態リスク評価・対策研究室長 五箇公一先生が、「生物多様性とは何か、何が重要か」と題して、生物多様性の概念、意義、その崩壊や地域固有種を脅かす外来生物などについて、わかりやすく、また興味深く紹介していただくとともに、今後の人間の生活と生物多様性について問題提起をしてくださいました。

国立環境研究所 生態リスク評価・対策研究室長 五箇公一先生

WECからは、3つのテーマで研究発表がありました。

最初に、「ダムにより生み出された生態系-10年間の水源地生態研究で分かったこと-」と題して、研究第三部長 金澤裕勝から発表がありました。

発表では、水源地生態研究会と、その前身である水源地生態研究会議の活動経緯に触れ、水源地生態研究会を構成する6つの委員会の研究成果を発表した後、アウトリーチとしての書籍、各地域でのセミナー、河川水辺の国勢調査への反映等の事例を紹介し、今後の方向性を示しました。

研究第三部長 金澤裕勝

次に、研究第一部 環境管理室長の浅井直人から、「ダム水源地域活性化-ダム湖利用実態調査結果等から見えてきたこと-」と題して発表がありました。

国土交通省の「河川水辺の国勢調査結果〔ダム湖版〕」の「ダム湖利用実態調査」について、平成26年度調査報告書を解析し、ダムが位置する地域の特性に基づく、水源地域活性化方針策定ツールとしての有用性を示しました。

さらに、平成31年度調査や、過去の調査の結果を合わせて解析することにより、利用実態トレンドの変遷や近年のニーズ傾向を読み取ることができ、今後の水源地域活性化推進に貢献できるであろうという展望を示しました。

研究第一部 環境管理室長 浅井直人

三番目に、研究第二部 次長 小野雅人が、「排砂バイパストンネルの計画・設計の体系化に向けた計画・設計標準検討フローの検証」と題して、当センターが設置したダム土砂マネジメント研究会で作成された、「排砂バイパストンネルの計画・設計標準検討フロー」の検証について発表しました。その中で、排砂工法の適用性と貯水池特性の関係においてこれまで示されてきたSBT(排砂バイパストンネル)適用性評価との高い親和性、土砂濃度が新たなSBT適用性判断指標になり得る可能性について指摘しました。

また、適用性判断指標検討の継続、適用性が低いケースの取り扱い、接続支川数の検討フローへの取り込みなど、今後の検討の方向性を紹介しました。

研究第二部 次長 小野雅人

最後に、特別講演として、東京大学名誉教授 太田猛彦先生が、「森林の現状と林業政策の転換」と題し、東京大学名誉教授 虫明巧臣先生と共に執筆・監修され、発刊されたばかりの「ダムと緑のダム」の内容を解説しながら御講演くださいました。

我が国の森林の劣化と回復や、森林の多面的機能と森林・林業について、最新の動向をわかりやすく解説していただきました。

また、SDGs(持続可能な開発目標)についても、時間を割かれ、持続可能な森林の経営や森林環境税、森林認証制度についてもご紹介いただきました。

東京大学名誉教授 太田猛彦先生

発表・講演を通じて、会場は熱気を帯び、予定時間を超過するほどでしたが、発表会は盛況のうちに無事終了することができました。

講演者の方々や、ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。