「ダム管理所長に聞く」第17回《夕張シューパロダム》

(聞き手:水源地環境センター 名古屋事務所 可児)

(WEC)
「ダム管理所長に聞く」第17回は、北海道開発局 札幌開発建設部 夕張川ダム総合管理事務所の野上所長にお話しをお聞きしました。
野上所長、どうぞよろしくお願いします。では、はじめに夕張シューパロダムのご紹介をお願いします。

■シューパロとはアイヌ語で本当の夕張川

(野上所長)
ダムの紹介の前にシューパロの語源についてご紹介いたします。
シューパロとは、夕張の語源でもあるアイヌ語のユーパロ(鉱泉の湧き出るところ)に、「本当の」または「源の」という意味である「シ」をつけたものです。「シ・ユーパロ」は本当の夕張川、夕張川本流の意味と解釈されています。

■湛水面積全国第2位の重力式コンクリートダム

(野上所長)
夕張シューパロダムは、北海道最大の河川である石狩川の支川夕張川に建設された多目的ダムで、国土交通省・農林水産省・北海道企業局・石狩東部広域水道企業団による共同事業「夕張川総合開発事業」の一環として建設されました。前身である大夕張ダムは、かんがい用水・発電を目的としていましたが、あらたに洪水調節・流水の正常な機能の維持・上水道用水を加えてパワーアップした、堤高110.6m、湛水面積が全国第2位の15km2、総貯水容量が全国第4位の4億2700万m3の重力式コンクリートダムです。

               湛水面積日本第2位のシューパロ湖

■沈んだ大夕張ダム


沈んだ大夕張ダム

(WEC)
私は名古屋勤務で岐阜県にある徳山ダムには近く、最近も訪問したのですが、あの広大な徳山ダムの湛水面積が第3位ですから本当に広いですね。夕張シューパロダムには前身に大夕張ダムがあったということですが、経緯についてお話しいただけますか?

(野上所長)
現在、ダム湖(シューパロ湖)には、このダムの前身である大夕張ダムが沈んでいます。約50年間にわたり、地域のために働いてきた大夕張ダムは、夕張川下流地域にかんがい用水を供給するため、また発電のために、川端ダムとともに建設されました。その後、夕張川流域では稲作、牧畜などの農業の発展に伴って農業用水が不足するようになったため、農林水産省は農業用水のさらなる確保をめざし、昭和55年に大夕張ダムを13.3mかさ上げする再開発計画を立案しました。ところが翌昭和56年に台風12号が北海道を襲い、石狩川流域は観測史上未曾有の大水害に見舞われてしまいました。


これを受け、北海道開発局は「石狩川水系工事実施基本計画」を改定して、夕張川に治水ダムを建設する計画を立てました。また、札幌市等の人口増加による水需要の増大などに応えるため、多目的ダム建設事業として事業計画を拡大し、この結果、大夕張ダムの155m下流に夕張シューパロダム建設を行うことになりました。

夕張シューパロダムと大夕張ダム

夕張シューパロダムの完成により、かんがい用水はこれまでの約2.4倍の農地へ供給することが可能となり、クリーンエネルギーである水力発電の最大出力も新しい発電所建設とも相まって約2倍となりました。また新たな役割として夕張川・石狩川の下流域約200万人の暮らしを洪水から守る「治水」、夕張川にすむ動植物の生命を育む「流水の正常な機能の維持」、利水には需要の増加が著しい江別市・千歳市など4市3町の「水道用水の確保」が加わりました。

■夕張シューパロダムの周辺は豊かな自然の宝庫

(WEC)
夕張シューパロダムのある夕張はどのような所ですか?

(野上所長)
夕張川下流部の低平地は、明治初頭には広大な湿地でしたが、治水や農業開発が進み、現在では豊かな農地として利用されています。主な農作物には水稲、小麦、タマネギ、てんさい、メロン、長いもなどがあります。

夕張シューパロダムの周辺には、国内では北海道でしかみられない植物や可憐な花々、大型の哺乳類から小さな両生類・魚類・美しい鳥類などの多種多様な動植物が生育しています。

夕張シューパロダム周辺に生育する主な動植物

■夕張シューパロダム周辺の観光名所

(WEC)
夕張シューパロダムの魅力を教えて下さい。

(野上所長)
夕張シューパロダムの周辺は魅力がいっぱいです。夕張岳、三弦橋、旧白金橋、立枯れ風景など四季折々の美しい景色を見てリフレッシュしたり、夕張の歴史を学んでみたりしてはいかがでしょうか。

夏から秋にかけてはカヌーを楽しむことができ、場所によっては静寂に包まれた神秘的な体験も可能で、秋は紅葉の名所としても知られています。湖面からは立ち枯れた木々やアーチ橋が顔を覗かせ、かつての繁栄を感じさせるノスタルジックな風景を楽しめます。

毎年、8月から9月にかけてシューパロ湖の水位が下がり、湖底に沈んだ大夕張の街が現れます。昨年9月にシューパロ湖に沈んだ街を歩こうというイベントが初めて開催され、約1600人の人が訪れました。今年の2月には、ダム湖では世界初となるアイスカルーセルが開催され、シューパロ湖に氷のメリーゴーランドが出現しました。コロナ禍により無観客での実施でしたが、来年こそは多くの方に夕張シューパロダムの堤体と夕張岳を眺めながら楽しんでいただければと思います。

他にも、自然の恵みを生かしたグルメを楽しんだり、スポーツで汗を流したり、のんびりと散策したり、温泉でゆったりしたり・・・。ダム見学とあわせてたくさんの方々に訪問いただきたいです。

三弦橋

冬の夕張岳と夕張シューパロダム

シューパロ湖のアイスカルーセル

■北海道の四季折々の大自然を満喫したい方、是非お越しください


夕張シューパロダムを背にする野上所長

(WEC)
最後に一言お願いします。

(野上所長)
札幌市から高速を利用し、2時間程度の場所(夕張市)に位置し、魅力ある自然豊かなダム湖周辺を活用し、地元(ゆうばりde街あそび実行委員会・ダムサポーター)のみなさまと一緒に、夕張市を活気ある街づくりの基盤として夕張シューパロダムを応援していただけるよう情報発信していきたいと考えています。

これからも、たくさんのみなさまにお越し頂ければと思います。

(WEC)
大変お忙しい中本当にありがとうございました。


○夕張川ダム総合管理事務所HP:https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/yuubari_damu/index.html