年頭のご挨拶

一般財団法人 水源地環境センター
理事長 平井 秀輝

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

一般財団法人 水源地環境センター
理事長  平井 秀輝

昨年は、WBCでの活躍、メジャーリーグでのホームラン王、2度目のMVP獲得と、大谷翔平選手の活躍に驚かされることばかりでした。大谷選手と言えば、今や二刀流が代名詞ですが、ダムも大谷選手に負けていません。治水、利水に加え、環境、地域振興など、その活躍は多刀流そのものです。国土交通省吉野川ダム統合管理所では、13ものSDGsのターゲットをダムの取組や働きと関連付けて紹介されており、ダムは、さながら13本の刀を持った多刀流といったところです。

この13刀流のダムの最近の話題が、「ハイブリッドダム」施策です。皆さんご存知のとおり、気候変動やカーボンニュートラルへの対応のため、治水と発電の両立や民活による地域振興に取り組むものです。先程の剣術に例えれば、ダムは同時に多くの刀を持ち、各々つるぎを交えていますが、この「ハイブリッドダム」は、多くの刀の備えだけではなく、刀の組み合わせ使用による新たな技の創出、すなわち、治水、発電、地域振興の組み合わせにより、新たに効用を生み出すものです。既に、利水容量の治水活用(事前放流)の制度化、治水容量の発電活用(運用高度化)の試行など、相互に出入り禁止だった空間が乗り入れ可能な互助空間として、新たな効用を生み出しています。

一方、地域振興につきましても、今や40もの国土交通省ダムがインフラツーリズムに登録されました。電力ダムの取り組みも近年目覚ましく、「黒部の太陽」で有名な黒部ダムでは、黒部宇奈月キャニオンルートがいよいよ提供されます。ダムを体感していただき、ダムについての理解をより深めていただく機会につながることを期待します。

さて、昨年は、ダムへの期待の高まりを感じた一年でもありました。

川辺川ダムでは、専門家で構成される「流水型ダム環境保全対策検討会」での議論を経て、「川辺川の流水型ダムに関する 環境影響評価準備レポート」が公表されました。同レポートは、環境影響評価法に基づく準備書に相当する図書として、環境影響評価の結果について取りまとめられたものです。気候変動の影響により降雨が激甚化・頻発化する中、着実に事業が進み、流域の皆様の安全・安心の確保につながることを心から願っています。

令和6年度水管理・国土保全局関連予算につきましても、新規ダムとして2事業が政府原案に盛り込まれました。1点が、北海道の糠平ダム再生事業で、利水容量の洪水調節容量への振替と既設の糠平ダムの嵩上げにより新たな洪水調節容量の確保を行うもので、もう1点は、太田川総合開発事業で、既設の樽床ダムの容量振替と太田川本川上流部に新規ダムの整備を行うもので、久々の新たなダム建設計画による事業です。

また、メインテーマを「次世代に向けたダム貯水池の持続可能な開発・管理」とした東アジア地域ダム会議、通称EADCを本年6月に名古屋で開催することになりました。今回で第12回の開催を迎え、我が国での開催は実に8年ぶりとなります。日本、中国、韓国を中心として、ダム建設や管理等についての各種方面からの国際的な情報提供、議論が行われる予定です。国内最大級のダム再生事業である「新丸山ダム」、土砂バイパストンネルを建設した「小渋ダム」の見学も予定されています。是非、皆様にも会議に参加いただければと思います。

さらに、昨年、「ダムと環境の科学」シリーズの第4弾「流砂環境再生」が出版の運びとなりました。当書の知見の一部は、当センターの水源地生態研究会の成果でもあります。当書は、流砂環境の改善につながる土砂管理を考えるという点で、非常に示唆に富むものです。是非ご一読いただければと思います。以上、本年も昨年にも増してダムへの期待が高まりますが、当センターもその期待に応えるべく尽力して参ります。

最後に、本年も引き続き水源地ネットを通じ、ダムや水源地域に関するタイムリーな話題や水源地域活性化に資する情報を発信するとともに、皆様の情報交換の場となりますよう努めて参ります。どうか、旧年同様のご指導、ご支援をお願いいたしまして年頭のご挨拶とさせていただきます。