長安口ながやすぐちダム(徳島県)

2018.09掲載
国土交通省 四国地方整備局
那賀川河川事務所

1.ダム諸元


▲長安口ダム改造事業完成イメージ
 ■名称 :長安口ダム
 ■所在地 :那賀郡那賀町長安
 ■河川名 :那賀川水系那賀川
 ■形式 :重力式コンクリートダム
 ■堤高/堤頂長 :85.5m/200.7m
 ■総貯水容量 :54,278,000m3
 ■事業者(管理者) :国土交通省 四国地方整備局(徳島県建設)
 ■既設ダム完成年 :1956年
 ■完成予定年月 :2020年(ダム改造事業)
 ■管理者 :徳島県(1956年~2006年)
 国土交通省 四国地方整備局(2007年~)


2.現在の工事概要

 長安口ダムは、那賀川水系唯一の洪水調節機能を有する多目的ダムで、『治水・利水・環境』面におけるダム機能向上を目的として、長安口ダム改造事業に着手しました。水利用及び洪水調節のため通常の運用を継続しながら、完成から60年以上経ったダムを改造する事業であり、洪水調節能力の増強のため国内初となるダム上端から削り取る方法(ダム高85.5mから最大で幅11.2m、高さ37.0m、奥行き30.3m)で改造を行っています。また、新設するゲートは国内最大級(幅10m、高さ約20m)で2門増設します。さらに、増設ゲートからの放流水を既設ゲートの放流水に横からぶつけて減勢する国内初の減勢方式を採用するなど、国内のダム改造技術が集結しています。
 2018年7月末時点で1門目のゲート設置及び2門目の削り取りが完了しており、2門目のゲートを設置するためのコンクリート工事を行っていて、今年度が最盛期となっております。今後、2門目のゲート設置、ダム下流減勢工のコンクリート工事、下流河川の濁水長期化軽減のため選択取水設備の設置工事を進める予定です。

見どころ写真
▲工事中の放流状況 ▲1門目ゲート設置完了 ▲2門目ゲート施工状況

3.日本最大級の規模の置き土砂を実施

 那賀川上流部は脆弱な地質特性と日本有数の多雨地帯であることから、平成16年をはじめ大規模土砂災害が度々発生するなど、土砂生産が活発です。このため、長安口ダムでは、堆砂が進み貯水池機能の低下が懸念されています。一方、ダム下流では土砂移動の分断、過去の大規模な砂利採取などによって、川底の低下、二極化、また、川砂利が粗くなっているなどの課題があります。
 そこで、ダム貯水池容量の維持とダム下流の河川環境改善(粗粒化の解消など)を目指して長安口ダムでは、貯水池上流に堆積した土砂を取り除き、ダム下流へ置き土砂(土砂還元)を実施しています。


4.土砂還元による物理環境の大幅な改善

 長安口ダム下流への置き土砂により平成21年から平成28年までで約95万m3(ダンプトラックに換算すると約19万台に相当する量)の土砂を下流に流しました。
 土砂還元前は、流れの緩やかな淵でも大きな粒径の河床材料が優占するなど多様性に乏しく、河床には落ち葉などの有機物の堆積が目立っていました。土砂還元後は淵であった箇所に瀬や砂礫河原が出現し、河床材料も流れの緩やかな淵では大きな粒径と小さな粒径がモザイク状に分布するなど変化に富んだ物理環境になっています。また、川底には供給された礫が多く見られるようになり、浅場ができることで流れが生じ、クレンジング効果により有機物の堆積なども少なくなった様子が確認出来るようになりました。


5.新たなアユ産卵場の確認

 土砂還元を行っているダム下流では、土砂還元により供給された礫が主体の河床材料で構成される箇所で、新たにアユの産卵場が確認されました。

那賀川河川事務所では、土砂還元による河床の変化の状況を分かりやすくまとめた動画を事務所ホームページ等で配信しています。

○事務所ホームページ:http://www.skr.mlit.go.jp/nakagawa/committee/dam-reservoir.html
○Facebook : https://www.facebook.com/shikokuchisei/videos/vb.301528470250216/508515502884844/?type=2&theater
○youtube : https://www.youtube.com/watch?v=OWnH15l80_E


6.ダム見学について

▲長安口ダム上流の写真

(1)自由見学可能なスポット
  長安口ダム資料館(ビーバー館)駐車場
  長安口ダム上流側から長安口ダムを眺めることが出来、資料館では長安口ダムの歴史を学ぶことが出来ます。
(2)申込が必要な見学  ※係員による説明がある見学
  ①お申込要領
  URL:http://www.skr.mlit.go.jp/kikaku/spotguide/ (四国の工事現場等見学ガイド)
  URL: http://www.skr.mlit.go.jp/kikaku/spotguide/to_pdf/161718_nagayasuguchi1.pdf (長安口ダム工事見学)
  ※お申込方法や注意事項の記載があります。よく読んでお申し込み下さい
  ②見学を予定しているスポット(見どころ)
  ●ダム天端道路(ダム下流クレーンの作業状況を見ることが出来ます。)
  ●減勢工(国内初の減勢方式を採用した減勢工の施工状況を見ることが出来ます。)
  ※見学予定時期によって、見学内容が変更します。


(3)アクセス

自動車でお越しください。(徳島県庁から国道55号バイバスを阿南市内へ約1時間、県道286号を経由し、国道195号に乗り換え高知方面へ約1時間)
長安口ダム管理所にお越しいただいたのち、管内をご案内いたします。
●工事場所: 徳島県那賀郡那賀町長安
●見学可能期間: 平成27年4月~平成31年3月、10:00~16:00(土日、祝祭日を除く)
●見学所要時間: 約30分程度(ご希望にあわせて応相談)
●見学可能人数: 5~30人程度
●関連URL: http://www.skr.mlit.go.jp/nakagawa/dam/index.html
●注意事項: 工事の都合により現場内に立ち入れない場合があります。現場見学の希望時間・人数等を事前に連絡頂ければ、担当者が誘導しダム上などから工事を見学していただけます。
●お問い合わせ先 : 四国地方整備局 那賀川河川事務所 長安口ダム管理所 TEL:0884-66-0121



7.地域の観光やダムカレーなど


▲ダムカレー ▲ダムカード ▲スマート回廊ツアーデイ
もみじ川温泉ジビエダムカレーは、鹿肉をトッピングしたダムカレーとなっています。 お子様ダムカレ―もあります。 改造事業前の写真を使ったダムカードで、長安口ダム管理所で配布しています。 カードラリー、ツアーパス(対象店舗でお得なサービス)などのイベントで、休日(毎月第4日曜日)の見学も可能です。

8.事務所からPRコメント

 長安口ダム改造事業では、国内で前例のない『運用中のダムに新たに洪水吐を設置する』工事として関係各所から注目を集めています。
 また、ダム下流の土砂供給不足による河床環境や河道地形の変化及び海岸浸食など様々な土砂の問題に対し、長安口ダムの堆砂対策により掘削した土砂をダム下流に置土し、洪水時に下流へ土砂が供給されるよう、ダム下流土砂還元を行っています。

▲ダム下流置土状況写真 ▲選択取水設備模型 ▲改造工事の概要を記載した
クリアファイル
▲長安口ダム施設改造広報資料
(ダムカード風資料)随時更新