水源地を旅する 第七弾「佐賀県・唐津市と佐賀平野を守り潤すダムを遊びつくす」



■はじめに

 今回は「水源地を旅する」企画で初めての九州を取り上げます!佐賀県唐津市の唐津駅をスタートして嘉瀬川(かせがわ)ダムと厳木(きゅうらぎ)ダムを巡るコース。途中にはダムを見ながらのランチとカフェタイム、古くから愛されてきた湯治のできる温泉街、唐津市内を一望できる鏡山など立ち寄りスポットがいっぱいのドライブコースです。旅の終わりには唐津駅前のゲストハウスに泊まって地元の生活をちょっぴりのぞいてみましょう。

 唐津駅までは福岡空港から車で60分、博多駅からは電車で90分ですので、意外とアクセスがいい場所にあります。8月下旬の佐賀豪雨で例年より観光客は少なめでしたが今回ご紹介するコースはほぼ被害なし。唐津観光には絶好の時期の訪問となりました。




■嘉瀬川ダムを目指して

 唐津駅(A)でレンタカーを借りたら、嘉瀬川ダムの手前、北山ダムまで45分程度ドライブをします。道中カーブは多いですが信号もほとんどなく非常によく整備された道ですので快適なドライブが楽しめるでしょう。

 北山ダムは管理事務所の前【地図】(B)から見学可能です(天端は立ち入り禁止でした)。渇水に苦しむことが多かった米どころ佐賀平野に60年以上にわたって農業用水を供給してきたダムです。付近には、寄せ豆腐が名物の直売所マッちゃん【地図】(C)がありますので、時間のある方はそちらにもぜひ寄ってみてください。380円のざる寄せ豆腐は大豆の香りがしっかり感じられて私も大好きな味です。

 北山ダムから車で10分程度嘉瀬川沿いに下流に下れば、嘉瀬川ダム右岸側にダムの駅富士しゃくなげの里【地図】(D)がありますのでここで待ちに待ったランチタイムです。

 ダムの駅の中にあるレストラン風樹ではダム湖を眺めながら地元産の食材で作られた食事がいただけます。特に定食類を頼んだ方は地元産のお米がお代わり自由なのが私にはとてもありがたいです。

 今回頼んだのは、四季ご膳。バランスよく、少しずつ地元の食材を味わえます。都会で外食をするときって、濃い味で強制的においしく感じさせられているような味覚を感じることがあるのですが、ここで食べる料理は素材の味を体全体で受け止めて健康にお腹いっぱいになりました。

 食後のケーキセット(750円)はテラス席でいただくのがお薦めです。ダムと湖面を間近に眺めながらのティータイムは気分爽快です。今回頼んだのは抹茶チーズケーキと風樹オリジナルのパセリジュース。景色とおいしいスイーツを堪能しました。

 さらにダムの駅では新鮮な野菜や地元のお菓子、お土産などを買えますのでいろいろと探検してみましょう。


■嘉瀬川ダムを見学

 ダムの駅から50メートル程度下流に嘉瀬川ダム管理事務所(E)があります。ダムカードをもらったらしばしダムを見学します。嘉瀬川ダムは2012年に完成した比較的新しいダムです。先ほどご紹介した北山ダムの完成で佐賀平野への農業用水の供給が非常に安定しましたが、この嘉瀬川ダムの完成により佐賀平野の洪水リスクは大きく軽減されました。今年は春先から渇水に苦しんでいましたが、今回の8月下旬の豪雨で満水近くにまで水がたまったそうです。

 国道を数百メートル下ったところに車2台程度が止められる駐車スペース(F)があるのでダムの写真を撮ってみましょう。


■食後は、名湯でスッキリ

 ダムの見学を終えたら下流の名湯・熊の川温泉へ。ちどりの湯【地図】(G)では520円で日帰り入浴ができます。このあたりの温泉は温度の低いぬる湯ですので、長い時間入ることができます。そのため、古くから湯治に使われていたそうです。

 食いしん坊の方は温泉のあとにダムカレーはいかがですか?先ほど見学した嘉瀬川ダムカレー、北山ダムカレーがいただけます。(写真は嘉瀬川ダムカレー600円)


■ダム〆は厳木ダムで

(写真は厳木ダム中央公園【地図】より)

 熊の川温泉から車で30分程度で厳木ダム【地図】(H)。北山ダム、嘉瀬川ダムの水は佐賀平野を経て有明海に流れますが厳木ダムは唐津市を経て日本海へ流れていきます。8月の豪雨でも唐津の街を守ってくれました。

 ダム湖上流の公園には「佐用(さよ)の湧水【地図】(I)」があり水くみに来る人が後を絶たないようです。唐津市の水道水は非常においしいのですが、湧き水を汲んで飲むのもまた格別です。


■唐津の旅は夜まで続く……

 ダム見学は以上ですが、唐津市街に戻ったら夕方の鏡山展望台【地図】(J)へ。鏡山すぐそばの駐車場に車を止めたら5分程度舗装路を歩いて展望台に到着です。

 唐津市内を一望できますので、唐津に来たら必ず寄っていただきたいスポットです。厳木ダムの水が流れてくる松浦川、唐津城(K)、虹の松原(L)など唐津のオススメスポットが一望できます。

 今回は、唐津市内の萬宿ハトムギソウ【地図】(M)で1泊してみました。1泊3000円~の激安素泊まり宿で、寝室のエアコンもテレビも部屋の鍵も、ホテルにある設備はありません。(リビングに冷房、お部屋には扇風機がありますし夜は涼しいのでご安心ください。)

 写真はムギさんの愛称で親しまれているオーナーの中島さん。中島さんはこの宿を「町の勝手口」と呼んでいて、私は観光客が唐津の生活を感じるための入り口だと思っています。ホテルの完ぺきなおもてなしを期待している方にはとてもオススメできませんが唐津の人の普通の生活を体験したい人は一度泊まってみてはいかがですか?ムギさんと話せば、地元の銭湯恵びす湯【地図】(N)(なんと佐賀県で唯一の昔ながらの銭湯!詳しくはこちら)、ちゃんぽん屋さん、産直、周辺観光地情報など観光案内所とは違う視点でいろいろ教えてくれます。

 萬宿ハトムギソウでは夜に運が良ければみんなで夕食会が開かれることもあります。この日は縁側に七輪を出してサンマやアユ、ウインナーなどそれぞれが持ち寄った食材を思い思いに焼いて初めて会ったゲストさんと交流を楽しみました。


■おわりに

 翌日、二日酔いで出発時刻が大幅に遅れたのはご愛嬌。旅行はスケジュールにとらわれすぎないでその場で心惹かれる気持ちに素直に従ってみるのがオススメです。唐津駅周辺には、唐津城(K)曳山展示場(O)など今回ご紹介できなかった良い場所がたくさんあります。ぜひ萬宿ハトムギソウや唐津市内のホテルに泊まって翌日に唐津市内を歩いてみてください。

写真・文:ダムライター猪野光太郎(いのっち)


■今回のルート