森吉山もりよしざんダム周辺の自然環境を活用したインフラツーリズム

2018.09掲載
国土交通省 東北地方整備局
能代河川国道事務所 森吉山ダム管理支所

 森吉山ダムが位置する北秋田市は、狩猟を生業としてきたマタギ発祥の地として知られています。そのマタギ文化や水源地域の豊かな自然を通して、自然との共生や先人の知恵を学びながら力強い子どもの成長を支えることを目的とした体験活動「マタギの地恵体験学習会」が8月17~19日の2泊3日で実施され、市内の小学生18人が参加しました。ダム完成を機に、森吉山麓の自然環境特性を活用した地域づくりを目指す「森吉山ダム水源地域ビジョン実行委員会」も協力し、地域一丸となった取り組みが注目されています。
 佐藤慶博実行委員長は子どもたちに「みんなが毎日口にする食べ物はすべて命あるもの。3日間の体験を通して食べることの大切さ、命の尊さや自然の豊かさを感じて」と呼び掛け、秋田名物のきりたんぽ鍋づくりは、具材となる鶏の解体作業からスタートしました。おそるおそる羽をむしりながら、鶏の温かさに触れ、それぞれが理解を深めていきます。その後は、冷蔵機器がない時代は天然の冷蔵庫として使用されていた冷水(ひやみず)という地区にある風穴までの山道を探検。中に入ると夏でもひんやりと涼しく、キノコやミョウガを採集することができました。

▲初めて触れる比内地鶏 ▲天然のクーラー!風穴を探検 ▲冷たい湧き水が気持ち良い

 その他、森吉山周辺でも多く目撃されているツキノワグマがいる阿仁あに熊牧場(くまくま園)で、マタギでもある小松園長先生からクマの生態について学び、マタギ資料館では国重要有形民俗文化財にも指定されている、マタギの狩猟用具について、マタギの鈴木さんの解説を受けました。また、子どもたちは昼食のために、イワナやヤマメを釣ったり、どんどん森や水、そして人とふれ合っていきます。

▲阿仁熊牧場でクマの生態を学ぶ ▲マタギ資料館で熊皮を着る ▲マタギの弟子入り、釣り体験
▲森吉山ダムカレーの美味しさにビックリ ▲ダム建設の歴史や役割を学習 ▲洪水吐きから越流中の様子を見学

 森吉山ダムでは広報館内で地元産の食材にこだわった森吉山ダムカレーを食べて大満足。秋田杉で作られたカヌーで湖面散策を楽しんだり、ダム見学を通じて周辺の環境特性や自然の力の強大さを改めて感じ、豊かな水の力が逆に自然災害にも繋がることを実感しました。先人たちが堰やダムをつくり、里山での暮らしや命を守ることに力を注いだ姿を思い描いた時間となりました。

▲秋田杉のカヌーでダム湖
(森吉四季美(しきみ)湖)を散策
▲ロックフィルダムを登り記念写真

 地域の自然や住民とふれ合うなかで、子どもたちは、五感を使い心ゆくまで楽しみながら交流をすることができました。3日間の自然体験を通して育んだことは、ふるさとを愛する心を育て、これから生きてゆくための人間力を培う大切なプロセスとなったと思います。今後は、さらに県外からの参加者を増やすとともに、全国への発信を心がけ、高齢化が急速に進む地域における生きがいづくりにもつながる成果をあげたいと考えています。

主催:北秋田市教育委員会生涯学習課・マタギの地恵体験学習会実行委員会
協力:森吉山ダム水源地域ビジョン実行委員会

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