東北電力NFTダムカード購入者限定のダム見学会が開催されました(本名ほんなダム・宮下みやしたダム)

2023.5掲載
一般財団法人 水源地環境センター
研究第一部 最上 友香子

 令和5年4月8日 (土) に、東北電力NFTダムカード購入者限定のダム見学会が開催されました。

※NFTダムカードの詳細は後述

 今回のダム見学会では、東北電力創立当初より水力発電所の開発を進められてきた福島県奥会津地域のダムのうち、本名ほんなダムと宮下みやしたダムが対象となりました。

*本記事と併せて是非、水源地ネット2023年4月号
「ダム管理所長に聞く」
第33回《阿賀野川水系11ダム群の管理》
もご覧ください。

普段は立ち入ることができない宮下ダムの下流点検橋を見学する参加者

NFTダムカードとは?

東北電力により制作されたNFTダムカード

 NFTダムカードの “NFT” とは、Non Fungible Token(非代替性トークン)の略称で、ブロックチェーン技術を利用することで、デジタルデータに希少性を持たせるなど、固有の価値を与えることができるものとなっているそうです。

 東北電力では、地域活性化の実証実験として、この先端技術を活用してダム情報をデジタルコンテンツ化することで、唯一無二であることを証明し希少性を高めたNFTダムカードを制作する新たな試みが行われ、福島県奥会津地域の本名ほんなダム、上田うわだダム、宮下みやしたダム、柳津やないづダム、片門かたかどダムのNFTダムカードが制作されました。

 現地ダムの見学会やドローンによる空撮動画の特典も用意され、売り上げの一部をダムが立地する地域の活性化に役立てていくこととされています。

※1:奥会津水力館「みお里」において、アンケート回答者に期間限定(令和4年11月22日から12月28日)でNFTダムカード(特典なし)5種類を配布
※2:宮下ダムのオリジナル空撮動画、本名ダム・宮下ダムの見学会の特典つきのNFTダムカードはオンラインで販売(現在は終了しています)

ダム見学会は ”奥会津水力館「みお」” からスタート

奥会津水力館「みお里」

 奥会津水力館「みお里」に、参加者計10名(NFTダムカード購入者9名+電気新聞記者1名)が集合してダム見学会が始まりました。

 普段入ることができないダム管理設備にも立ち入ることから、注意事項の説明が行われ、ヘルメットが配布されました。

 ここから先は、『本名ダム→宮下ダム』の順に巡る班と『宮下ダム→本名ダム』の順に巡る班の2班に分かれての見学会となりました。

見学会の説明を受ける参加者
高いところにも上ると聞いて、参加者はドキドキわくわく

道の駅「奥会津かねやま」
こちらで本名ダム、上田ダムの写真を見せると各ダムのダムカードが貰えます

本名ダムの見学

本名ダムと左岸の本名発電所

 本名ダムは昭和29年に建設された重力式越流型コンクリートダムで、阿賀野川水系の東北電力のダムの最上流に位置しています。

 本ダムの操作が下流10ダムの操作に大きく影響するため、ダム管理上重要なダムとなっています。

 本名ダム下流にある本名発電所はダムで川の水をせきあげ、取水口から取水した発電用水をダム直下の発電所まで水圧管路を経て利用する『ダム式発電所』となっています。

ゲート修繕時にはこちらのクレーンで堤体まで
仮ゲートを運んで設置するそうです

東北電力の方に質問をする参加者
素朴な疑問を気軽に質問できるのも見学会の魅力のひとつ

今回上った上屋はここです!
(筆者お手製のマカプゥも一緒に見学に参加しました)

洪水吐ゲート上屋への階段

見学会当日は風が強く、少しスリルがあった階段
(湖面が波打っています!)

間近で見ることができたゲートの巻上機(ゲートを開閉するための装置)
に興味深々の参加者

本名ダム上流
山の上の方では積雪が残っている様子が見えます

本名ダム下流
黄色い橋梁はJR只見線の第六只見川橋梁

ダム天端にある ”堤体見張所”

 普段は個人でダム巡りを楽しまれているダムマニアの方々の参加もありましたが、本見学会では東北電力の社員の方々に同行いただけるということで、「あの設備は何ですか?」といったやりとりや、普段入ることができない設備の内部を各々のカメラに収めて楽しむ姿がみられました。

参加者の質問がきっかけで急遽見せていただいた
昇降設備の動作のデモ

湖面上にある塵芥回収の作業場と天端の高低差が大きいことから、
安全に昇り降りするために使用されるそうです

奥会津水力館「みお里」の見学

 2ダムの見学の合間に、奥会津水力館「みお里」の見学も行われました。

 東北電力奥会津水力館「みお里」は、アートや映像など多彩な展示を通じて「水力発電の仕組み」や「只見川における電源開発の歴史」、「水力発電をはじめとする東北電力の再生可能エネルギーの活用に向けた取り組み」、そして「奥会津地域がもっているさまざまな魅力」が発信されている展示施設となっています。

 本日の見学会のために、特別にダム・発電所建設当時の資料等を展示いただいたほか、ギャラリー展示作品の貴重なポストカードをお土産にいただきました。

「奥会津讃歌」をテーマに制作された巨大ステンドグラス

只見川の電源開発に取り組んだ白洲次郎に関する展示

本日の見学会のためにダム・発電所建設当時の
新聞記事や資料も特別に展示いただきました

玄関に展示されている水車ランナと記念撮影
(本名発電所で実際に60年間稼働したランナの6枚の羽の1枚)

パンフレットとともに開館時等の記念日にしか配布されていない、
ギャラリー展示作品の貴重なポストカードもいただきました

宮下ダムの見学

 続いてダム見学を再開し、宮下ダムに向かいました。

 宮下ダムは前述の本名ダムよりも古く、戦後間もない昭和21年に建設された重力式越流型コンクリートダムです。

 宮下ダム下流の宮下発電所は『ダム水路式発電所』となっています。
 本名発電所で採用されている『ダム式発電所』はダム直下流に発電所が位置していますが、『ダム水路式発電所』の宮下発電所では取水口から取水した発電用水は、落差を少しでも大きくして発電量をアップさせることを目的に、約700m下流の発電所まで圧力隧道、水槽を経て発電に利用されています。

宮下ダムと右岸にある宮下発電所

堤体には13門のゲートが連なります

堤体右岸にある取水口のゲートは建設当時から使われているそうです

4号ゲートの巻上機も建設当初からのもの

 建設から約70年が経っている宮下ダムですが、堤体のほか取水口のゲートや4号ゲートの巻上機といった建設当初からある設備も残っており、参加者はダム・発電所の歴史を感じながら見学しました。

ダム下流に設置されている点検橋に向かいます

普段は立ち入り禁止の階段を降りていきます

ゲートを間近で見学できました

下流に目を向けると満開の桜と悠々と流れる只見川が見えます

1門だけ放流していた5号ゲートも間近で見学

珍しいダブルローラーゲート(4号ゲート)
道路が発達していなかった建設当時、資材等の運搬が可能なよう設計

12号ゲート上部は起伏ゲートとなっています

 宮下ダムの4号洪水吐ゲートはダブルローラーゲートになっています。これは、建設された当時は周辺道路が未整備であったために、河川を利用して資材等の運搬が可能なように設計されたものだそうです。

 放流していた5号洪水吐ゲートはラジアルゲート、上部が起伏ゲートとなっている12号ゲートと多様なゲートを見ることができ、ゲート好きのダムマニアには堪らない見学となりました。

道の駅「尾瀬街道みしま宿」

 見学会後ダムカードがいただけるということで、宮下ダム下流にある道の駅「尾瀬街道みしま宿」へ向かいました。

 会津地鶏「唐揚げ定食」や、昔から桐の里として桐タンスや桐下駄づくりが盛んな三島町ならではの桐炭を使った「桐炭チョコソフトクリーム」もいただけます。

 同じ三島町内のJR只見線会津宮下駅近くには、3つのアーチ橋が重なる姿を撮影できる全国でもここだけの撮影スポットが地元有志の方々により整備されています。

道の駅「尾瀬街道みしま宿」
こちらで宮下ダムの写真を見せるとダムのダムカードが貰えます

道の駅に設置されている食堂「桐花亭」の
会津地鶏「唐揚げ定食」

アーチ3橋(兄)弟
3つのアーチ橋を一つのファインダーに収められるのは全国でここだけ!

おわりに

 見どころ盛沢山のNFTダムカード見学会となりました。
 お土産もたくさんいただき、その中には観光パンフレットや他の阿賀野川水系の水力発電所の情報もあり、次の奥会津のダム旅への期待も膨らみます。

 平成23年7月の新潟・福島豪雨による被害を受けて復旧工事が進められていたJR只見線も昨年の10月に全線開通していますので、奥会津へ『ダム・鉄道の旅』に出かけてみてはいかがでしょうか。

見学会でいただいた資料やお土産

※地理院地図GSIMaps 標準地図 にダム・道の駅等の地点を加筆して作成