安威川ダムを見学してきました!!

一般財団法人水源地環境センター
研究第二部 朝倉加連

令和5年12月11日と令和5年12月13日に、有識者を対象とした安威川ダムの現地視察会が開催され、本センターは運営補助として携わりました。その際に、普段はまだ入れないダムの天端やダム下流などを見学してきましたので、ご紹介します!(両日とも内容は同じです。)

○安威川ダムのご紹介

まずは、安威川ダムについてご紹介します。

安威川ダムは大阪府茨木市にある大阪府の多目的ダムです。石や岩石を材料としてつくられたロックフィルダムで、その高さは76.5m、長さは337.5mです。ダムの有効貯水容量(ダムの全容量から堆砂容量を差し引いた容量)は1,640万m3です。

これだけではどのくらいの大きさかよくわからないので、琵琶湖と比べてみましょう。琵琶湖の水位1cmに相当する水量は約680万m3とのことですから、もし安威川ダムが空っぽだったら、琵琶湖の水位が2.4cm高くなる量の雨でダムは満水になります。

出典:安威川ダム建設事務所

左の写真は安威川ダムサイトを下流から眺めた様子、右の地図は安威川ダムの位置図です。

安威川ダムの一番の特徴は、都市に近いダムということです。普段、皆さんは「ダム」と聞くと奥まった山間地域にあるのを想像すると思いますが、なんと、安威川ダムは茨木市の市街地から車でわずか20分、新名神高速道路の茨木千提寺いばらきせんだいじICからはわずか5分で行くことができます。

また、都市に近い立地ながら、自然も豊富で、渓流、里山、棚田など貴重な自然環境があり、周辺には様々な生き物が生息しています。

安威川ダム上流は自然の多い渓流・里山環境です。

安威川ダム下流は途中から遊歩道が整備されており、多くの府民に利用されています。

安威川ダムの役割は「洪水調節」と「流水の正常な機能の維持」と「ダム下流河川の環境改善」です。ここで、なんと「ダム下流河川の環境改善」の役割をダムに位置づけ、貯水容量の中に環境改善のための放流容量を持っているダムは全国で初めてです!先進的ですね!

下流河川の環境改善は、ダムを操作して小さな洪水を人為的に起こすことで行います。これを「フラッシュ放流」と呼びます。安威川ダムでは、試験湛水が終了した令和5年6月からこれまでフラッシュ放流を計12回実施しました。

最大25m3/sのフラッシュ放流の様子(R5.10.3)

フラッシュ放流前後での川の様子です。放流前は暑くて雨が少ない日が続いていたので藻類が増えていましたが、放流後は流されて綺麗になりました!

安威川ダムでは、このような環境改善放流の計画に関する検討や、試験湛水による環境への影響評価を、有識者で構成された「安威川ダムの自然環境保全対策等に関する懇話会」で専門的な意見を聞きながら進めています。

今回、筆者は本懇話会の構成員を対象とした現地視察会へ同行したので、その内容をご紹介します。

■「懇親会」のことをもっと知りたい方はこちら↓↓
安威川ダムの自然環境保全対策等に関する懇話会に関するホームページ
https://www.pref.osaka.lg.jp/aigawa/aidamu/konwakai.html

○集合

安威川ダム建設事務所田中所長による挨拶

安威川ダム建設事務所にて構成員の皆様に集合していただいた後、これから見学に行く場所の説明や、今年度の環境調査の結果などの説明がありました。

その後、現地に向けてヘルメット、安全ベスト、長靴の3点セットを受け取りました。(安全第一!!)

○現地視察

車数台に別れて乗車し、出発しました!まずはダム堤体へ。ダム堤体まで20分ほどで着きます。ここからは写真で安威川ダムを紹介していきます。

まずは左岸側からダム貯水池を眺めます。堤体の高さに対して水位が低く感じますね。安威川ダムは洪水調節のための容量が有効貯水容量(総貯水容量から堆砂容量を差し引いた容量)の9割弱を占めるので、洪水時以外はこのくらいの水位なのです。いざというときに備えています。

試験湛水 サーチャージ水位到達時(令和5年5月9日撮影)(出典:安威川ダム建設事務所ホームページ)

ダムの非常用洪水吐きです。壮大ですね。試験湛水期間だった令和5年5月8日には大雨が降り、サーチャージ水位に到達しました!

ダム天端の管理用通路に来ました。両側の高欄石がカッコいいです。夜にはライトも付くので安心です。

都市に近い安威川ダムからは、下流の市街地や、超高層ビルのあべのハルカスまで夜景が綺麗に見えるそうです!また、逆に大阪市内からダムが見える唯一のダムで、全国的にも、都市圏からダムを見ることができる数少ないダムです。ダム天端の通路が開放されれば夜景のスポットとしても期待されています。(注意:R6年2月現在ダム天端の管理用通路は開放されていません。)

ここでクイズです。
写真ではわかりにくいですが、ダム天端の真ん中部分が、よく見るとほんの少し盛り上がっています。これはなぜでしょう??
(クイズの答えは最後にありますよ!)

ダム堤体の表面はリップラップで仕上げてあります。仕上がりがきれいですね!リップラップとは、堤体を保護するために、堤体の一番外側を覆うように大きな岩や小さな岩を敷き詰めて施工する方法で、上流部側では貯水池からの波から堤体を守り、下流側では堤体保護の他に、景観的な意味合いもあります。

出典:茨木市ホームページ

ダム堤体から下流を見下ろしました。何か整備中ですね。これは、大阪府が施工中の広場だそうで、完成後は茨木市が公園として管理するようです。

この他にも、安威川ダム周辺では様々な公園が整備される予定です!その中のひとつダム上流の「ダムパークいばきた」には、右岸と左岸を繋ぐ吊り橋もかかる予定だとか。令和6年春に公園の一部がオープンし、12月以降、吊り橋等が順次オープンする予定だそうです。楽しみですね!行ってみたい!

令和5年10月3日に実施した、最大25m3/sフラッシュ放流の前後での置き土の様子です。
放流前と放流後を比べてみると、放流後はゴツゴツした大きめの礫などが目立っており、下流へ砂など細かい粒径の土砂が供給されました。

ダム下流の堤体直下に来ました。川の中に土が置いてあります。

これは人為的に置かれたもので、この取り組みを「土砂還元」、川の中に置いてある土は「置き土」といいます。ダムにより上流からの供給が減ってしまう土砂を下流河川に還元しようという環境改善の取り組みのひとつです。安威川ダムでは環境に配慮した様々な取り組みをしているんですね!

次は、ダムから少し離れた場所にあるビオトープ池へ来ました。ここは、ダム事業により消失してしまった“ため池”の代替地として作られたビオトープで、通年を通して、カエルやトンボなどの様々な生き物が暮らしています。

日も傾いてきて、解散です。寒かったですが、安威川ダムのことをよく知ることができました。今後、「ダムパークいばきた」がオープンし、一般開放されたときには、遊びに行きたいと思います!

クイズの答え:堤体の重みによる沈下を考慮しているから

■安威川ダムの事をもっと知りたい方はこちら↓↓
大阪府安威川ダム建設事業に関するホームページ
https://www.pref.osaka.lg.jp/aigawa/aidamu/