地すべり排水の有効利用について

2018.11掲載
国土交通省 東北地方整備局
鳴子ダム管理所

 鳴子ダムは、昭和32年10月に完成したダムで、湛水開始後に地すべり性の挙動が生じ、昭和35年以降本格的な地すべり対策を実施しています。特にダムサイト左岸直上流部の地すべりは、規模も大きく様々な対策を実施しています。
 左岸直上流部での対策の1つとして、国道108号の旧トンネル内に2本の地すべり排水トンネル(計320m)を設置し、そこからボーリングを削孔して左岸地山の地下水低下を図っています。
 このトンネルからの排水は、一部をダム管理所やダム直下の住家の生活用水として活用していたものの、それ以外の余り水はダムサイトより約100m下流地点で江合川に排水されていました。
 その排水量は年平均で約180ℓ/分の量ではあるものの、排水先の左岸地山に覆没して江合川への流入は確認出来ない状況となっていました。
 そこで、枯れる事の無いこの豊富な水の有効利用を考えた結果、災害時等の用水として活用することとしました。
 非常時にも簡単に取水出来るよう、排水先を約180m下流に移動させ、車等での進入や取水が容易になるよう、塩ビ管で取水口を設置しました。

地すべり排水を利用した非常時用水取水口

▲地すべり排水を利用した非常時用水取水口

 排水先が変更になったことにより、渓谷の岩盤露岩部の表面を流れるため、落差80mの滝が出現しました。

地すべり排水を利用した落差80mの滝

▲地すべり排水を利用した落差80mの滝

 一方、ダム下流住家の生活用水として供給していた水については、3年前に住民が不在となったことにより供給を停止し、余り水と一緒に排水していましたが、ホースでダム直下まで繋ぎ、打上げ高さ約7mの噴水をつくりました。

地すべり排水を利用した落差80mの滝

▲地滑り排水を利用した高さ7mの噴水

 これにより、新たに出現した「滝」と「噴水」は、ダム直下の江合川渓谷の素晴らしい眺望に加え、新名勝が加わった事になりました。
 「名勝には名前が必要」ということで、この滝と噴水について、鳴子ダムの水源地にある大崎市立鬼首小学校の皆さんに、名前を付けて頂くこととしました。その名前のお披露目を行う式典が9月13日、ダム直下の堤体エプロン部で開催されました。
 滝は「いやしの滝」、噴水は「鬼鳴噴水(おになるふんすい)」と名付けられました。

▲命名理由
「滝を見てとってもいやされたので」

▲命名理由
「鬼首と鳴子を結ぶ噴水になることを願い頭文字をとった」

 名前が披露された後は児童による合唱と太鼓が演奏されました。多くのお客さんの前で少し緊張気味の児童たちでしたが、太鼓は大変迫力ある演奏で大きな拍手が起こりました。

▲全校児童による合唱

▲全校児童による合唱

▲3~6年生による心鼓太鼓の迫力ある演奏

 式典では命名を記念して会場の皆さんで風船を飛ばしました。
 ダム堤体と風船のコントラストが大変素敵でした。

▲空高く上がる風船を暫く眺めていました

鳴子ダム管理所ホームページ
http://www.thr.mlit.go.jp/naruko/