一般財団法人 水源地環境センター
理事長 平井 秀輝
明けましておめでとうございます。昨年の十一月から当センターに奉職し、本年より理事長を務めることとなりました。はなはだ微力ではございますが当センターに課せられました使命達成のため鋭意努力致す所存でございますので、何卒格別のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。併せまして、新年に当たり水源地環境センターの業務全般に亘りまして昨年同様引き続きよろしくお願いいたします。
さて、昨年も全国各地で大きな洪水が発生し、なかでも七月に九州熊本の球磨川が氾濫し大水害となりました。熊本の小京都、人吉市を濁流が襲い、人々の日常と生活の基盤を一瞬にして奪ったことは記憶に新しいところであります。球磨川ではダムによらない治水を目指すべく長年にわたり地域で議論されてきましたが、そのような前提での現実的な治水対策が見いだせていませんでした。今回、ダムを含めた流域全体で被害を防ぐ「流域治水」に取り組む方向で議論がスタートしました。被災地の皆様のことを思いますと一刻も早く結論に至り、早期の対策着手を願うばかりです。一方、このような大水害は昨年に限ったことではなく、一昨年の台風19号災害、その前年には西日本豪雨災害、さらにその前年には九州北部豪雨災害と、年中行事のように発生しています。地球温暖化、気候変動の影響が我々の日常となってしまったと言っても過言ではありません。このような中にあって、改めて水源地環境センターの使命と役割の重要性を痛感するところです。
なお、一連の大水害を受け昨年12月に、流域治水の推進など防災・減災、国土強靭化対策について、約15兆円規模の新五カ年計画のとりまとめや、第3次補正としてその推進に約5.9兆円を措置することを政府が閣議決定いたしました。国土強靭化を進める上でダム等が果たす役割は大きく、ダム建設が環境に調和した形で円滑に進むとともに、一層効果的なダム運用が行われるように、当センターとしても一層尽力して参る所存です。
また、早期の収束を願うばかりではありますが、コロナ禍の現下、水源地をとりまく状況は極めて厳しいものがあります。一方、最近の報道等を通じ、ダムが素晴らしい価値を生み出す可能性を持つ場であることについての国民の理解が深まっていると感じる機会も多くなっています。引き続き我々センターも知恵と工夫を絞り、皆様とともに、ダム及びその周辺を多くの人が訪れ、様々な交流が進む場に一層なるよう努めて参ります。
このほか、コロナ禍の下でも、住民の皆様の安全、安心を確保するために様々な工夫をしながらダムの使命を果たす職責を常時負っているダム管理業務に従事する皆様には、頭が下がる思いでいっぱいです。昨年の出水期には、ダム操作員の万が一に備え、人員確保のための何重にもわたる応援体制を構築されたともお聞きします。当センターでは、ダム管理の現場を支える皆様のお役に立つ取り組みを一層現場に密着した形でさらに進めて参る所存です。
さて、個人的な思い出話ですが、私と水源地ネットとの関わりについて若干ご紹介させていただきたいと思います。WEC30年史によれば水源地ネットは、「平成4年12月、月刊誌ダム水源地ネットを創刊」とされています。それより遡る平成2年当時、私がダム管理業務を担当していた本省係長の時、室長(当時、河川局開発課水源地対策室)から突然、「ダム管理所間の情報交換のため全国のダム管理所の情報を集めてくれ」と指示を受け、私が集めた情報を室長自らはさみと糊を駆使しB4紙1枚にとりまとめ、全国の管理所に「ダム管理ニュース」として毎月FAXで全国へ一斉配信しました。私はこのニュースこそが現在の水源地ネットの原型でないかと今も密かに思っています。現在の水源地ネットは、当時のアナログ作業で作成したモノクロの文字ばかりの1枚紙に比べれば、見栄えも中身も充実し、配信対象が大きく拡充されるなど当時を知る者からは驚き、感激さえ覚えるものであります。これも、これまでの関係者の皆様のたゆまぬご支援ご協力の賜物と感謝に耐えません。
最後に、改めて今年もダムや水源地域に関するタイムリーな情報や水源地活性化に資する情報を発信するとともに、皆様の情報交換の場となりますよう尽力してまいりますので、引き続きのご指導をお願いいたしまして就任及び年頭のご挨拶とさせていただきます。