(聞き手:水源地環境センター 名古屋事務所 可児)
(WEC)
「ダム管理所長に聞く」第16回は、北陸地方整備局 三国川ダム管理所の大熊所長にお話しをお聞きしました。
大熊所長、どうぞよろしくお願いします。では、はじめにダムの紹介をお願いします。
(大熊所長)
まず初めに、ダムがある三国川の読み方なのですが「みくにがわ」と間違って呼ばれる場合が大変多いです。三国川は、源流地が新潟県(越後国)・群馬県(上野国)・福島県(岩代国)の3国の境界地から流れている川で、語源は諸説があり、一説には「さんくに」がなまって「さぐり」になったと言われています。「さぐりがわ」ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
三国川ダム位置図
三国川ダムは信濃川水系魚野川の右支川三国川の新潟県南魚沼市清水瀬地先に位置する中央コア型ロックフィルダムで、堤高119.5m、堤頂長419.5m、流域面積153.4km2、総貯水容量2,750万m3、治水・水道・流水の正常な機能の維持・発電を目的とした多目的ダムです。
ダム建設は、魚沼地方で死者4名、重傷者9名、建物3,300戸、農地1,990haの被害をもたらした昭和44年8月12日に発生した、三国川の既往最大の洪水を契機として信濃川の治水計画に位置付けられました。
昭和56年にダム本体工事に着手し、平成4年10月に竣工し、三国川ダム管理所は、平成6年7月に発足しています。三国川ダムは北陸地方整備局の直轄ダムで唯一「管理用発電所」を設置し、管理所の電力を自給し、余剰電力は電力会社に売却しています。
昭和44年8月の魚沼地方の被災状況
(WEC)
当地方の水害では平成23年7月新潟福島豪雨が記憶にございますが、三国川ダムではどのような対応をされたのでしょうか?
(大熊所長)
平成23年7月新潟福島豪雨では、7月26日~30日にかけて前線による大雨により降雨継続時間が長く二山の波形となりました。流域平均総雨量は665mm、時間最大雨量55mmを記録し、流入量のピークは管理開始以降最大となり一山目で640m3/s、二山目で527m3/sを記録しました。二山目でサーチャージ水位を超過したため緊急放流に移行し、最大236m3/sを放流しましたが、三国川の合流する魚野川の小出地点において水位を27cm低下させ、計画降水位を1cm超過に止めることができました。併せて大量の流木を捕捉し、下流の被害軽減に貢献することが出来ました。
平成23年7月新潟福島豪雨時の三国川ダム操作
三国川ダムと小出観測所の位置
(WEC)
近年、これまでの想定を超える様な豪雨の発生が多発しており、ダムの果たす役割がますます重要になってきていますが、三国川ダムではどのような対応をされていますか?
(大熊所長)
信濃川水系魚野川・三国川の河川改修・災害復旧等の進捗に合わせて、平成23年新潟福島豪雨規模相当の降雨においても効果を発揮できるよう、洪水調節方式の見直しを平成31年3月に実施しました。また、令和2年5月29日に関係17機関と信濃川水系(中流部)治水協定を締結し、三国川ダムにおいても事前放流による洪水調節機能の強化を図ることとしています。
三国川ダム洪水調節方法の見直しによる効果
(WEC)
三国川ダムは、地域に開かれたダムとして毎年多くの人が訪れていますが、取り組みについてご紹介いただけますか?
(大熊所長)
三国川ダムは「地域に開かれたダム」として、また水源地域における拠点空間として、地域の人たちや観光客に親しまれ、年間25~30万人もの方々が訪れています。平成15年度には、三国川ダムと地域の代表で構成される「水源地域としての魚沼」の将来に向け、地域の方々の意見を取り入れながら、地域の将来ビジョン(将来あるべき姿)や地域振興・活性化に向けた「三国川ダム水源地域ビジョン」を策定しました。平成16年には「三国川ダム水源地域ビジョン」でまとめた取り組みを推進し、地域づくり活動を継続的に発展させていく組織として「しゃくなげ湖畔を楽しむ会」が設立され、三国川ダム周辺の方々はもちろんのこと、下流地域の方々とも連携し、交流人口を広げていく取り組みがなされています。「しゃくなげ湖畔を楽しむ会」は平成29年度に河川協力団体に認定され、平成30年度より花植え・新緑ウォーク等の企画・運営を河川法99条の委託として実施しています。
また三国川ダムでは、毎年、春から秋にかけ年間5万人を越える大勢の方にお越しいただいていることに加え、ダム湖周辺や周遊道路を活用した自転車レースなどのイベントでは1,000人を越える方にご利用いただいています。今後、更に三国川ダム周辺の魅力あふれる自然環境を活かした取り組みを進める一歩として、地元南魚沼市と共同でするとともに、関係機関と連携し、三国川ダム湖を安全に、もっと楽しく使っていただき、地域をもっと元気にすることを目的に「三国川ダム湖面利用協議会」を令和2年1月31日に設立し、湖面利用ルールを策定しました(令和3年1月7日改定)。
約50%が新潟県内、約40%が首都圏から、
幅広い年代の方々に来訪頂いています。
(WEC)
三国川ダムはとてもたくさんの人に親しまれているダムですね。最後になりますが、ダムの管理にあたっての課題や大熊所長のお気持ちをお聞かせいただければと存じます。
(大熊所長)
当地は豪雪地域であり、管理所へのアクセス道路(県道、市道とも)は冬期には通行止めとなります。そのため県道通行止め区間は許可を受けて、約2.7kmを自前で除雪し管理所へのアクセス道路を確保して通勤しますが、ダム天端上は視界不良で注意を怠ることができません。宿舎の除雪を行ってから出勤するため、通常は自家用車で30分程度ですが、冬場は1時間以上を要します。
出水時の管理は、初動体制は実質管理係2名で対応し、その後下流巡視1名、電気設備点検2名、機械設備点検1名と職員全員一丸となって対応していますが、平成23年の出水ではアクセス道路が遮断され一時孤立してしまいました。
飲料水は沢水を簡易浄水して使用し、昼食は弁当屋さんに管理所まで届けてもらえないので各自弁当を持参します。新聞も届けてもらえません。というと、非常に厳しい環境に置かれたダムの様ですが、市街地から約30分、自然環境良好のすてきなダムです。
三国川ダムは「イベントの場」「レクリエーションの場」「学習の場」として、新潟県内だけでなく、首都圏や幅広い年代の方々からお越し頂いてきました。これからもホームページやTwitterを通じてどんどん情報発信していきますが、コロナの状況が落ち着いたらぜひたくさんの方々にお越し頂き、ダムの役割についてご理解いただければと思います。
三国川ダム堤体を背景にした大熊所長
ホームページやTwitterなどから
タイムリーな情報発信を行っています。
(WEC)
本日はどうもありがとうございました。