明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
昨年もダムに関する話題は事欠きませんでした。一昨年から運用開始されたダムの「事前放流」(豪雨に備え治水容量を確保するための利水の貯留水の事前放流)が、流域治水関連法改正により法的枠組みの下、本格始動することとなりました。また、昨夏の8月の前線豪雨では、いくつもの地点で「平成30年7月豪雨」いわゆる「西日本豪雨」と総雨量で同程度となる記録的な豪雨となりましたが、国土強靭化のための3か年緊急対策による河道掘削や事前放流の実施を含むダム効果により、氾濫河川数が7割も減少しました。改めて治水対策の必要性、重要性を痛感したところです。このようにダムの話題も地球温暖化により治水対策に目が行きがちですが、治水対策以外も多くの貢献をしています。
今や小中学校の学習でも扱うことになったSDGsですが、ダムの役割を最近話題のSDGsに照らして考えてみますと、多くの貢献が期待されていることがわかります。ご存知の通りSDGsは17の目標からなりますが、ダムは多くの目標に関わっています。6番目の目標である「CLEAN WATER AND SANITATION」(安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスの達成)への貢献、9番目の目標である「INDUSTRY, INNOVATION AND INFRASTRUCTURE」(治水、利水上の強靭なインフラ構築)への貢献、SDGsと言えば同義扱いされがちな13番目の目標である「CLIMATE ACTION」(気候変動による自然災害に対する強靭性及び適応力強化すなわち治水対策の強化、水力発電による再生可能エネルギー)への貢献があります。さらに、見過ごされがちですが、14番目の目標である「LIFE BELOW WATER」(海洋及び沿岸の生態系の強靭化や回復の取り組みによる健全で生産的な海洋の実現)の貢献、15番目の目標である「LIFE ON LAND」(陸域生態系と内陸淡水生態系の保全、回復及び持続可能な利用の確保)の貢献があります。このようにダムは多くの目標に関わっており、大きな期待が寄せられています。しかし、これらの目標への貢献はダムが健全に機能すること、すなわち、水源地の水質や土砂問題が解決されることが前提です。かかる観点で「持続可能な世界」という人類共通の目標達成のため、引き続きダムが社会貢献できるよう水源地環境センターの使命と役割をしっかり果たしていく所存です。
さて、昨年末に「令和3年版 ダムの管理 例規集」を出版しました。本書は「平成18年版 ダムの管理 例規集」が未だに国・都道府県などの行政機関や全国のダム管理所等において日常業務で活用いただいており、改定の要望を多数いただいていたことから15年ぶりに改訂出版したものです。これまでのダムの社会貢献も、全国のダムの現場においてダムの管理に日夜全力を尽くしておられる方々の努力の賜であります。本書がこれまでの現場の方々が積み重ねた知恵を広く伝承でき、ダムの管理に携わっておられる方々の日常業務に少しでもお役に立てられればと願う次第です。
最期に、本年も水源地ネットは、ダムや水源地域に関するタイムリーな話題や水源地域活性化に資する情報を発信するとともに、皆様の情報交換の場となりますように尽力して参る所存です。どうか、旧年同様引き続きのご指導、ご支援をお願いいたしまして年頭のご挨拶とさせていただきます。