流域治水およびカーボンニュートラルに資するダム再生技術の研究開発拠点を設置
~ダムを、「賢く」、「増やして」、「永く」使うために~

概要

2024年4月に京都大学防災研究所は、気候変動下で激甚化する豪雨災害に備えたダムの洪水調節機能の強化や、国産の再生可能エネルギーとして改めて評価が高まっている水力発電の拡大に向けた既存ダムのハード・ソフ卜の様々な再生技術を開発し、国内外のプロジェクトへ実装を進めるための研究開発拠点(京都大学防災研究所水資源環境研究センター産学共同研究部門ダム再生・流砂環境再生技術研究領域。以下、「拠点」と呼ぶ)を設置しました。

2018年の西日本豪雨や2019年の東日本台風以降、ダムの緊急放流が増加し、これを防ぐための事前放流が全国的に推進されています。一方で、現状ではダムの貯水容量には限りがあり、これをさらに有効活用するには、最新の気象予測情報を活用してダムの運用をさらに高度化したり、古いダムを改造して貯水容量を増やしたり、新たな放流設備を設置してより効果的な事前放流を実現させるための技術開発が求められます。このようなダムの運用高度化によって効果的に貯留された水は、次の洪水を見据えながらゆっくりと発電放流することで、増電効果をもたらすことが期待されます。

一方で、ダムには継続的に土砂が堆積してダムの機能を低下させるとともに、下流河川に本来流れるべき土砂を遮断する環境問題があります。これを踏まえて、近年ではダムの長寿命化と下流の河川や海岸に対する環境影響を軽減するための土砂供給をセットで実現する先進的なダムの堆砂対策が進められつつあります。

本拠点は、このような「治水」と「利水」のWIN-WINをもたらすためのダムを「賢く」、「増やして」使うための「ダム再生技術」、さらには、ダムを「永く」使うと同時に、河川や海岸環境の改善のためにダムから効果的に土砂を下流に供給する「流砂環境再生技術」を開発するために、京都大学の角 哲也特定教授を総括リーダーとし、関西電力株式会社、電源開発株式会社、中部電力株式会社、九州電力株式会社、株式会社建設技術研究所、株式会社ニュージェック、西日本技術開発株式会社、一般財団法人 水源地環境センター(WEC)、一般財団法人 ダム技術センター(JDEC)を参加機関として設置されました。

本拠点では、2023年度開始のBRIDGE「ダム運用高度化による流域治水能力向上と再生可能エネルギー増強の加速化プロジェクト」やSIP第3期スマート防災ネットワークの構築やスマートインフラマネジメントシステムの構築などの国の大型プロジェクトとも連携して研究開発を推進し、若手技術者の育成にも取り組みます。