国際学術交流会議「第12回東アジア地域ダム会議EADC (The East Asian Area Dam Conference)」が名古屋で開催されました。

一般財団法人 水源地環境センター

日本、中国、韓国で構成される東アジア地域ダム会議「略称EADC (The East Asian Area Dam Conference)」が令和6年6月3日から6月7日の5日間、名古屋コンベンションホール他にて開催されました。

当国際会議は2004年中国(西安)で開催されたのを皮切りに、日中韓の3か国で巡回開催しており、今回で20周年を迎え、初の名古屋での開催となり、日本を含め15か国331名(海外からは87名)の方々が参加されました。

日本での開催は8年ぶり、前回は2016年に札幌で開催されました。

【次世代に向けたダムと貯水池の持続可能な開発・管理】

今回の会議テーマは、「次世代に向けたダムと貯水池の持続可能な開発・管理」(Sustainable Development and Management of Dams and Reservoirs for the Future Generations)であり、6月4,5日の両日において論文口頭発表ならびにポスター発表が行われました。

会議は平井秀輝JCOLD(日本大ダム会議)会長の開会挨拶、来賓の足立敏之参議院議員(WEB)、中野穣譲国土交通省大臣官房審議官、角哲也ICOLD(国際大ダム会議)副総裁、中国大ダム会議代表、韓国大ダム会議代表、中国水利部代表からの挨拶、ならびにICOLD(国際大ダム会議)のMichel LINO総裁によるメッセージなどから始まりました。

左より平井JCOLD(日本大ダム会議)会長、Michel LINO ICOLD(国際大ダム会議)総裁、角ICOLD(国際大ダム会議)副総裁

基調講演では、スイス工科大学ローザンヌ校のAnton Schleiss名誉教授より、貯水池の堆砂対応技術のほかヨーロッパにおける水力発電におけるダムの役割について、また、特別講演として、国際連合の防災活動(国際連合地域開発センター:本部、名古屋市)に関連して政策研究大学院大学の廣木教授から水災害の現状、SDGsとの関連や課題、国連の活動についてご講演いただきました。

Anton Schleiss名誉教授(左)、廣木教授(右)による基調講演

シンポジウムでは、
1.ダムの安全評価と調査(Dam Safety Assessment and Surveillance)
2.気候変動下における貯水池・土砂管理(Management of Reservoirs and Sediment in the era of Climate Change)
3.ダムと貯水池の環境と生物多様性(Environment and Biodiversity of Dams and Reservoirs)
4.ダムの建設・維持管理における新技術とDX(New Technologies and Digital Transformation of Construction and Management for Dams)の4つのセッション
において、論文発表に続き、論文口頭発表者とのディスカッションを通じて国内外における当該問題の深堀りと解決策についての意見交換が行われました。

論文口頭発表、発表者とのディスカッション

セッションの合間、および6月7日のポスターセッションにでは展示されたポスターを前に活発なディスカッションが行われていました。

パネルディスカッションで意見交換を交わす参加者

また、6月6日、7日は技術見学会が実施され中国、韓国、フィリピンなどから約90名の方が参加されました。当日は好天に恵まれ、現場ではダム貯水池堆砂問題の解決技術事例としての小渋ダムの土砂バイパストンネルの管理技術、ならびに既設ダムの活用技術事例である新丸山ダムの堤体嵩上げ技術についてご覧いただき、非常に活発な質疑応答が行われました。

新丸山ダム建設現場での質疑応答

新丸山ダム建設現場を背景にした参加者

小渋ダム土砂バイパストンネル吐口にて

小渋ダムを背景にした参加者

【東アジア地域ダム会議(EADC)並びに大ダム会議について】

日中韓の各国は、国際大ダム会議(International Commission on Large Dams、1928年設立、公用語は英語と仏語、略称ICOLD)に加盟しており、今回の会議もその組織の東アジア地域における学術交流会議として位置づけられている。大ダムとは、堤高15m以上のダムと定義されている。現在、世界106ヵ国が国際大ダム会議に加盟しており、事務局本部は仏国パリにある。

我が国の加盟機関である(一社)日本大ダム会議(Japan Commission on Large Dams, 略称JCOLD)は、1931年(昭和6年)に加入。1944年~1951年は第2次世界大戦および戦後の混乱期のため退会していたが、1953年に再加入し現在に至っている。会員はすべて法人で、ダムに関する政府関係機関、電力会社、調査研究機関、学術団体、関係業界団体、建設コンサルタント会社、建設会社、製造業会社等であり、現在77社/団体が加盟している(会長;平井秀輝 (一財)水源地環境センター理事長、事務局は東京都日本橋人形町)。