鳴子ダムのインバウンド対応~治水・利水・環境に加えて観光も使命に~

鳴子ダム管理所

職員全員と地域の方々が一丸となって対応したすだれ放流

今年もこの時期恒例の「鳴子ダムすだれ放流」を実施しました。すだれ放流とは、ダム完成翌年の昭和33年から毎年行われている「満水時放流点検」の際に堤体面を流下する堤頂越流水の姿がすだれに似ていることからそう呼んでおり、鳴子温泉郷の春の風物詩ともなっております。

今年はコロナ禍が明けて1年となり、多くの方々に楽しんでいただくつもりでおりましたが、今期は記録的な暖冬・小雪であり、雪解け水が少ないことが予想されたため、関係者間で協議の上、例年より前倒しで4月23日~25日(平日)に実施しました。GW前となり、また、1日目と2日目は天候に恵まれなかったこともあり、訪れた観光客は多くはありませんでした。

それでも、例年であれば、来客者でダム下流側の展望広場駐車場が一杯になり、駐車場内の混雑や駐車場の空きを待つ車両で国道108号に渋滞が発生し、近隣の方々や一般交通車両に迷惑をかけていたところです。

今年は、職員全員(期間業務職員を含む)でアイディアを出し合い、右折入場の抑制(即席の看板作成)、駐車場内交通整理員や問合せ電話への対応を全員で交代しながら担当しました。その結果、渋滞への苦情はゼロとなりました。逆に、「駐車場内の案内がしっかりしていて気持ち良く観光できた。また来たい。」(群馬県からの来客)との高評価を得ました。

5ヶ国語別「小型パンフレット」提供開始

まだコロナ禍前までには戻っていないようですが、海外から日本を訪れる観光客が増えつつあります。鳴子温泉街でも外国人観光客を目にすることが珍しくなくなりました。かの「インバウンド」に当ダムへもお越しいただき、鳴子温泉地区へ幾ばくかの経済効果があれば、と思っています。

鳴子温泉地区を訪れる観光客の国(言語)別トップ5を鳴子観光・旅館案内センターへ訊いたところ、日本語、台湾語、タイ語、英語、そして中国語でした。そこでトップ5の言語別に一般パンフレットと小型パンフレット(いわゆる「ダムカード」)を作成し、今後の更なるニーズ拡大に備えることにしました。

(おまけ)管理所へ上る坂路に愛称

当管理所の職員やダムカードを求めに訪れる方は国道108号から急な坂路を登る必要があります。大きな車両や軽自動車ではかなり大変です。これにはダムカードをもらいに来る方も難儀・困惑していると思いますが、これを逆手にとって、「○○坂」などの愛称をつけて、「5か国語版に増えたダムカードを希望される方は、国道108号から鳴子ダム管理所への通称○○坂(超急です)を登って、ぜひゲットしてください。」などとSNSに書き込むなどして、じわじわと浸透させてはどうかと考えました。

早速、当管理所職員・期間業務職員・常駐業務委託技術員の方々15名を対象に募集し、応募総数7案から朝会総選挙にて決定したものが「i/i坂18(あいあいざかワンエイト)」です。「18」は当該坂路の最大傾斜角度が18度であることに由来しています。

命名者である今野和広氏による応募時の解説は以下のとおりです。

近年の旅行の目的は、「モノ」から「コト」にシフトしているとよく言われます。すなわち、現地での体験や現地に至るまでの(旅の)ストーリーを楽しみに観光客が目的地を来訪するスタイルが現在の主流とのこと。
今まで事務的に「鳴子側坂路」と呼んでいましたが、観光客の立場からすれば、この急勾配の坂道を上がることさえ「旅のストーリー」の一部になるのだろうと考えられます。
自分なりにこの坂路にストーリーを持たせるならば、ぱっと見て意味不明な名前にして、管理所(展示室)に入るとその意味が分かる仕組みがいいのではないでしょうか。 その一例として、 今野案01『 i/i坂(あいあいざか) 』
 ⇒ いぎなり・いっちゃね~ の略。とてもすばらしいですね(仙台弁)の意味。語感から「和気藹々」にもつながる。恋人同士が一緒にこの坂を登り切るとといぎなり愛が深まる、らしい・・・です(笑。 二人で「はかはか」しながら登るので。
名前の中に坂道(スラッシュ:/)があるのがポイント。まず一見して正確に読めないので、頭の中に「?」が出ることを想定しています。展示室に来て「あぁ、なるほどね!」を狙います。

当管理所では近日中にこれをSNSへアップするとともに、今年度中に坂路アスファルト面にペイントするなど、話題提供に努めたいと考えています。

■鳴子ダム管理所HP:https://www.thr.mlit.go.jp/naruko/