胆沢ダム融雪水を活用した運用高度化と水源地域振興

国土交通省東北地方整備局
北上川ダム統合管理事務所

岩手県奥州市に位置する胆沢ダムは、かんがい期が始まる前の融雪期に、利水容量を確保するため水位を高く維持することから、奥羽山脈から豊富に流れ込む融雪水のほとんどが未活用のまま自然越流していました。

-胆沢ダム 融雪期の自然越流状況-

未活用であった融雪水を有効活用するため、官民連携の新たな枠組みによる「ハイブリッドダム」の推進に基づく既設ダムの運用高度化の取り組みの一部として、特別な水位運用実施することで水力発電量を増やし、カーボンニュートラルやダムが立地する地域の振興に向けた取り組みを令和4年から試行しています。

具体的には十分な積雪があることを条件に、雪解け前に発電取水量増加により貯水位を低下させて空き容量を確保します。その後の融雪水を貯留することで利水容量を確保する取り組みで、水位低下時に増電となるほか無効放流が減少し、空き容量がある時期は急な融雪出水に対して治水安全度も向上します。

-融雪水有効活用のイメージ図-

試行は利水者連携により令和4年から開始し、他の利水者等への影響を確認しながら試行の範囲を増やしています。これまでの試行結果は次のとおりです。
1年目(R4)は水位-1mで実施、約696MWhの増電(一般家庭約2,680世帯分※1)
2年目(R5)は水位-2mで実施、約937MWhの増電(一般家庭約3,600世帯分※1)
3年目(R6)は水位-4mで実施、約1,930MWhの増電(一般家庭約7,420世帯分※1)
4年目(R7)は水位-5mで実施、約2,500MWh※2の増電(一般家庭約9,620世帯分※1)
 ※1 一般家庭1世帯の1ヶ月の消費電力量を260KWhとして試算。
 ※2 4年目(令和7年)の増電量は精査中のため見込みで記載。

-試行運用シミュレーション-

ハイブリッドダムの試行による他利水者等への影響が無いことが確認でき、増電による収益確保の見込みが立ったことから、増収益の一部を水源地域振興へ還元するため「ダム管理者」と「増電となる発電事業者」及び「ダム水源地域の自治体」の3者で水源地域振興に関する覚書を締結しました。


「ハイブリッドダムの試行による水源地域振興に関する覚書締結式」
月 日:令和7年7月25日(金)
場 所:胆沢ダム管理支所
出席者:奥州市長、電源開発(株)東日本支店長、北上川ダム統合管理事務所長
内 容:覚書締結〔覚書内容:増電収入の配分、分配方法、諸経費の扱い、対象期間等〕

-覚書締結式-