2018.01掲載
水源地ネット編集局
齋藤 源
プレゼンター(萩原雅紀さん、夜雀さん、琉さん、佳さん、炭素さん、星野夕陽さん、damjinさん) |
12月17日(日)都内で「日本ダムアワード2017」が開催されました。
ダムアワードは、一年間のダムの活躍を振り返り、ダムファン有志による選考委員が今年活躍したダムをノミネートし、選考委員と当日参加の観客(約150名)の投票により、部門賞とダム大賞を選出し、その功績を讃えるものです。
本年、第6回を迎えるダムアワードも益々人気上昇で、発売早々からチケットが取れなくなる騒ぎです。会場いっぱいの参加者は、今年もその1/3が初参加(初めての方、手を上げて!)ですから、ダム愛好家がますます広がっているのでしょうか。
プレゼンターは、ノミネートされた各部門の各ダムの特徴・見所などをわかりやすく、詳しく、楽しく、時には専門的に、当該ダムを熟知し、わが子を推薦するかのようにプレゼンされていました。
部門ごとにプレゼンターの紹介の後、会場参加者の投票があり、全部門紹介ののち各部門を通して今年一番活躍したダム大賞が投票され、開票となります。
今年のダム大賞は、九州北部豪雨時に洪水調節を行い、洪水及び流木による被害の軽減に大きく貢献した、水資源機構管理の寺内ダムと決まりました。
今年のダムアワードも総合プロジューサーは、萩原雅紀さんです。
放流賞にノミネートされたダムは10ダム、大ダムから農業用ため池まで、アーチ式ダムからアースダム、重力式ダムと豊富なダムの多様な放流写真が披露され、放流予告情報をチェックして現地に飛んでいく苦労が伺えます。
ノミネートされたダムは、浅川ダム、
●長野県の浅川ダムは、諸事情で完成まで時間のかかったダムですが、2016年10月完成して試験湛水開始後まもなく2017年1月サーチャージに達し、洪水吐きから越流した感動が伝わりました。
●愛知県瀬戸市の馬ヶ城ダム(水道用ダム)や香川県豊稔池土地改良区の井関池の放流はなかなか見られないものです。
●著名な豊稔池の放流写真はいつも豪快です。
●木津川高山ダムのクレスト放流は、完成してから二回目という珍しいもので、ダム下流河川環境に配慮したフラッシュ放流をクレストゲート6門のうち3門からの放流は見事です。
●木津川室生ダムの放流も珍しい。
●木曽川岩屋ダムは、40年ぶりの点検放流で、日本最大(18.3m×10.9m)のラジアルゲート2門からの放流は迫力があります。
●観光放流で人気の宮ヶ瀬ダムは、今年はナイト放流を試験的に実施して多くの観光客が訪れました。
●木曽川丸山ダムは、ダム再生事業で直下流に建設中の新丸山ダムに水没するという時に、700m3/sのクレスト放流がありました。
丸山ダム大好きのプレゼンター佳さんが丸山ダムの魅力と素晴らしい放流写真で熱くプレゼンされ、見事「放流賞」に輝き、涙の受賞となりました。
低水管理とは、農業用水、水道用水、工業用水、河川維持用水などのため、ダムから補給するための操作で、特に渇水時のダム操作運用は、下流河川の流量や使用水量と今後の降雨予測を見ながら、関係者と調整して行うものです。
●
嘉瀬川ダムの流入量放流量推移 |
●相模川水系総合運用は、神奈川県都市用水の60%の供給を行う国交省宮ヶ瀬ダム、神奈川県城山ダム、津久井ダム、道志ダムの相模川4ダムで、2017年4月以降の記録的少雨による渇水に対して4ダム連携して補給し渇水を乗り切ったものです。
宮ヶ瀬ダムは、大貯水量を活用し過去最低となる貯水容量52.4%まで活用しました。相模川水系総合運用が低水管理賞に選ばれました。
ダム管理所、ダム周辺自冶体、旅行会社等が企画したダムに関するイベントの4ダム(下久保ダム、比奈知ダム、天竜川3ダム、八ッ場ダム)がノミネートされました。 イベント状況や見どころなどが紹介された後、国交省八ッ場ダムがイベント賞に選ばれました。
●下久保ダムは、雨の少ない流域で貯まり難いダムですが、機会の少ない放流点検のゲート操作等の様子を図面と映像を実況して見て頂くという新しい試みです。
●比奈知ダムは、今年第19回となる施設見学会で、天端側水路(異常洪水時に越流量を放流する施設)の中を見学、数少ない施設でめったに入れないものです。
●天竜川3ダムは、国交省小渋ダム・美和ダムと長野県松川ダムの貯水池堆砂対策としての土砂バイパストンネルを見学するもので、国県共同のイベントです。この事業は、国交省が掲げる「ダム再生ビジョン」のハシリで今後の見本となることでしょう。
●八ッ場ダムは、長年の準備期間を経てやっと本体工事に入り、堤体コンクリートはRCD工法によるスピード施工(プレゼンは「
2017年の洪水調節を行ったダムでのうち、5ダム(
●今年の21号台風では、木津川上流高山ダム(予備放流による容量確保に加えてピーク以降のオーバーカット)、同
●雄物川水系玉川ダムは、大貯水容量を持つ貯水池の残容量と今後の降雨及び雄物川下流を見ながら秋田地方で豪雨となった7月洪水では放流量を200m3/s(計画は350m3/s)に絞り、8月洪水では過去最大となるピーク流量1200m3/sの流入量のピークを確認した後、放流量を40m3/sまで絞り込み雄物川下流大仙市などの洪水被害を軽減しました。これらの特別防災操作(絞り込み)は、大きな治水容量(1億700万m3/s)と的確な降雨予測により行われています。
●発電専用殿山ダム(熊野川、関西電力)は、気象庁基本降雨データを用いた関西電力の研究所独自の気象予測データを用いて、21号台風に対して、オリフィスゲートを用いて予備放流を行い遅らせ操作を行って、下流洪水被害軽減に貢献したものです。
各種の降雨予測システムについて、その特徴と精度などについて夜雀さんから詳しく説明がありました。
●7月5日の九州北部豪雨においては、筑後川佐田川の寺内ダム(水資源機構)が、これまで渇水であったため1200万m3(治水容量700万m3)の貯水池空き容量を活用して、計画最大流入量300m3/sを大きく上回る888m3/sの流入量に対して、ピーク時に878m3/sの調節を行い、下流洪水被害を軽減しました。寺内ダムでは、洪水調節のほか大量の流木を貯水池上流にとどめ流木による被害軽減にも貢献しました。
寺内ダムの洪水調節は、全部門を合わせて選ばれる「ダム大賞」を受賞しました。
●勝本ダム(h=31m、CA=2.4km2)・男女岳ダム(h=20.3m、CA=0.3km2)は、長崎県壱岐にあって極小流域のダムですが、7月6日九州北部豪雨の翌日の豪雨に対して、自然調節により洪水調節を行い、全治水容量を使いサーチャージ水位に達し、自由越流により越流するまで洪水調節を行ったものです。 この極小流域の小さなダムがそれなりに活躍したこと、壱岐まで駆けつけ取材してきた星野プレゼンターの熱意と参加者の感動により、大活躍の他ダムを制して洪水調節賞を受賞しました。
参加者による各賞選定結果発表があり、今後各賞の盾はダムアワード実行委員会の皆さんが手分けして受賞ダムに授与されると言うことです。
各賞投票結果整理の間、ダムカレー発案・ダムマニア元祖の宮島咲さんが食品会社と共同で、湯を切る(放流する)と焼きそばが出来るとして、「焼きそばUFO」を2018年1月に発売すると紹介がありました。