「ダム管理所長に聞く」第30回《鬼怒川上流ダム群》

(聞き手:水源地環境センター 企画部 奥秋)

(WEC)
「ダム管理所長に聞く」第30回は、関東地方整備局 鬼怒川ダム統合管理事務所の佐藤事務所長にお話しをお聞きしました。
佐藤事務所長、どうぞよろしくお願いします。

■4つのダムの統合管理

(佐藤事務所長)
鬼怒川ダム統合管理事務所は昭和47年に五十里ダムと川俣ダムの2ダムを統合管理するために藤原町(現日光市)の五十里ダム管理所に設置されました。その後、昭和55年に宇都宮市に移転しました。現在は、川治ダムと連携施設(五十里ダムと川治ダムをトンネルでつないだ施設)、湯西川ダムが加わり全部で4ダム、1施設を統合管理、運用しています。

昭和31年(1956年) 五十里ダム完成
昭和41年(1966年) 川俣ダム完成
昭和58年(1983年) 川治ダム完成  今年、完成から40年になります。
平成18年(2006年) 鬼怒川上流ダム群連携施設完成
平成24年(2012年) 湯西川ダム完成

その他、鬼怒川上流域には、栃木県管理ダムが3ダム、東京電力関係ダムが7ダムあります。

ダム位置情報 流域平面図

令和4年は湯西川ダムが完成してから10年が経過し、今年は川治ダムが完成して40年を迎えます。鬼怒川の本川に川俣ダム、川治ダムがありますが、2つともアーチ式コンクリートダムであり、高さは100mを越えます。

◎川俣ダム(標高:980m ダム高:117m)  ※標高=天端高さ

川俣ダムはアーチ式コンクリートダムです。非常にコンクリート量が少なく、薄いダムで天端幅は狭く現地で見ると驚きます。
ダムのすぐ下流には “渡らっしゃい吊橋” が見え、紅葉時にはとてもきれいです。ダム周辺は瀬戸合峡と呼ばれる景勝地となっています。

◎川治ダム(標高:619m ダム高:140m)

高さは140mとアーチ式ダムの中では国内4番目の高さです。関東地方では一番背の高いアーチ式ダムになります。その姿は非常に美しいとともに下から見上げた時は立体感を感じられる姿をしています。ダムのキャットウォークに立った瞬間に足がすくみますが、少し我慢して歩くと不思議なことに爽快になります。

“渡らっしゃい吊橋” と川俣ダム

見上げた川治ダム

鬼怒川の支川の男鹿川に五十里ダム、その支川の湯西川に湯西川ダムがあります。

◎五十里ダム(標高:594m ダム高:112m)

五十里ダムは昭和31年に完成しましたが、高さ100mを越え当時は一番の高さを誇りました。
時代にあわせて2度の改良を行い今にいたっています。ひとつは、放流施設のコンジットゲートを新たに設けたことと、もう一つは選択取水設備を設けて貯めたダム湖の水を適温で下流に供給することが可能となりました。このようにダムは現在のニーズにあわせて、改良をして対応することが可能な施設でもあります。
五十里ダムでは3月から11月まで河川環境の保全のため月に1回の環境放流を行っています。

◎湯西川ダム(標高:690m ダム高:119m)

湯西川ダムは一番新しく平成24年に完成し、10年を迎えました。洪水の放流はゲート開閉による調節でなく、自然放流により行うという特徴があります。春先の融雪が多い時は自然越流し、波模様の水紋が現れます。10周年の取組としてライトアップも行いました。

五十里ダム 環境放流

湯西川ダム ライトアップ

◎連携施設

連携施設は男鹿川の五十里ダムと鬼怒川本川の川治ダムを地下トンネルで結び、どちらかのダムに貯めきれない水のやりとりをして効果的に運用をする施設で、平成18年に完成しました。

連携施設

■ダムの効果・管理

鬼怒川の上流ダム群がもたらす効果は、洪水調節、河川の流水の正常な機能の維持、利水(農業用水、都市用水)の供給、水力発電などがあります。
平成27年の関東・東北豪雨時にはダム下流直近の川治温泉街付近の男鹿川で約1.6mの水位低下を行い、下流の鬼怒川では約25cm~56cmの水位低下の効果をもたらしました。
五十里ダムでは上流からの降雨による洪水量が1,410m3/sのうち約970m3/s(約70%)を貯めました。

洪水時の五十里ダム(右) と 川治ダム(左)

五十里ダムの貯留図

このような効果をきちんと発揮させるために、日々、職員は操作訓練と機能の維持管理を行っています。ダムは一度全ての運用を止めてメンテナンスを行うことが難しく、台風などに対応しながらの整備や部品の交換、維持管理などを行うというきめ細かさが必要ということが難しさであり、技術の腕の見せどころとなります。また台風期などの洪水期間が終わった後、次期洪水期までの限られた時間をいかに効果的、効率的に使ってメンテナンスを行い次の台風、豪雨に備えるのかということも非常に大事なことになります。川治ダム、湯西川ダムでは自家用の電気は水力発電によって賄っており、CO2の削減に寄与しています。

■地域振興関連情報

水源地域、ダム周辺地域の活性化の取組として水源地域ビジョンを策定し進めています。

◆ダムツーリズム

ダムやダム湖を活用したインフラツーリズムを展開しています。湯西川ダムでは、日本で初めてとなるダム湖への水陸両用バスの導入を支援し地域の魅力アップに協力しています。また、地域の住民や民間事業者の協力を得て、地域観光資源として活用できるように取り組んでいます。コロナ禍の影響がありましたが、今後は以前の状況以上に来訪者が増えるよう、取り組んでいきます。

ダックツアーのバス

◆ダム見学情報

4つのダムにおいて、それぞれ特色のある見学を行っています。例えば川治ダムではキャットウォークを歩く見学や地元の中学生がダム点検などを体験する見学、学習なども行いました。今年は完成から40年となりますので、新しい試みなど、力をいれていきますので、ご期待ください。また各ダムの見学は誰でも可能ですので、事務所HP、公式Twitter などをご覧いただき申し込んでください。川俣ダムについては冬期に見学ができないのでご注意願います。

川治ダムの見学

湯西川ダムの見学

◆環境放流

五十里ダムでは環境放流を行っています。100m3/sの放流なのでかなりの迫力があります。河川の環境保全と観光資源としても活躍しています。YouTube にもアップしていますので是非ご覧いただき、実際の放流を見に来てください。

◆ダムカードとダムカレー、4姉妹キャラクター

各ダムに行くともらうことができるダムカードやダム湖周辺で食べられるダムカレーなどもあります。また4ダムのキャラクターとして4姉妹が各ダムで出迎えてくれます。

川俣ダム

湯西川ダム

川治ダム

五十里ダム

トマトとグリーンの川治ダムカレー

鬼怒ダム4姉妹

◆カレンダー

ダムの魅力を知っていただきたく、職員自ら、昨年に引き続き、鬼怒川上流4ダム(五十里ダム、川俣ダム、川治ダム、湯西川ダム)のカレンダーを作成しました。点検放流や四季折々のダム写真を使い、作成しています。ぜひダウンロードしてご使用ください。

鬼怒川4ダム カレンダー2023

■最後に

五十里ダムをバックにした佐藤所長

ダムは様々な役割や可能性があるインフラ施設であります。治水、利水、発電はもとより、観光、CO2削減にも役立ちます。
鬼怒川上流のダムとして4つありますが、位置的には比較的まとまってダムがありますので、1日でたくさん回ることも可能です。
また四季折々にも楽しめますので、是非お越しください。

(WEC)
本日はありがとうございました。



■鬼怒川ダム統合管理事務所 HP: https://www.ktr.mlit.go.jp/kinudamu/
■公式Twitter について: https://www.ktr.mlit.go.jp/kinudamu/kinudamu00561.html
■鬼怒川上流ダムカレンダー: https://www.ktr.mlit.go.jp/kinudamu/kinudamu00902.html