SDGsを取り入れた維持管理による地域連携

国土交通省 東北地方整備局
三春ダム管理所

1.はじめに

福島県田村郡三春町に立地している三春ダムでは、SDGs(持続可能な開発目標17項目)のうち3項目と除草費用の縮減やカーボンニュートラルを実現する取組として、令和4年から「動物を利用した除草作業」を、試行しています。

2.概要

三春ダムでは「動物を利用した除草作業」として、三春ダム周辺の広場等を対象に、令和6年度も6月からポニー3頭とヤギ2頭で開始し、10月末まで除草作業を行っています。また、昨年度から「動物を利用した除草作業」が、今後も持続可能な取り組みへとするため、公募をし、河川協力団体(さくら湖流域協働ネットワーク)と業務委託契約を締結しています。

3.一次的効果

「動物を利用した除草作業」には、動物のレンタル費用はかかるものの、通常の除草費用に対するコスト縮減はもちろんのこと、急な傾斜地や足場の悪い箇所での作業従事者の安全確保や労働力不足の解消等、多くの有益性があることが確認されました。

また、相乗的な効果として、

  • 夏休みやお盆などの長期休暇のときには、家族連れの来訪者やSNSを利用した情報発信により、若者の来訪者が増加しました。
  • 「癒やされる」などの言葉が多数寄せられ、動物によるアニマルセラピー効果も期待できます。

来訪者からは、「今後も継続して欲しい」や「良い試み」などの言葉をいただいています。

4.二次的効果

(1) 地元の理解
三春ダムのホームページや三春ダム発刊の広報誌を利用し、「動物を利用した除草作業」の状況等を定期的に発信するとともに、流域自治体などへも、事あるごとに除草作業の取り組み内容について情報提供を行い、理解を深めて頂いています。

(2) フォロワー数の増加
リアルタイムな情報は、Twitterを用いてこまめに情報発信したことにより、着実にフォロワー数が増加しています。

(3) 来客数の増加
ダムからの情報発信により、ダムへの来訪者数が増え、ダム周辺にある町の公社が運営する直売所等への来客数も増えており、ダムからの情報が拡散され、地域への広がりを見せています。

(4) スキームの構築
ダムからの情報を元に、自治体や河川協力団体などの「地域活性化」へ向けた気運が今以上に高まり、「動物」を核としたスキームを構築しました。
三春町においても、昨年度から、ダムでの取り組みや有益性を理解し、「動物による除草作業」を開始し、令和6年度も、ひつじ3頭を用いた除草作業を、さくら湖周辺の貝山多目的広場で、9月末まで実施しています。

(5) 福祉分野の来訪者の発掘
ダムでは、「動物を利用した除草作業」を開始してから、福祉関連の来訪者が多く、癒やしの空間を提供しています。

5.更なる可能性へ

「動物を利用した除草作業」から「地域連携」に向けたスキームが構築され、更に何が出来るかを考えたとき、下記のような可能性を秘めています。

  • SDGsの観点から、動物の排泄物を肥料とし、菜の花等の草花の種を蒔いて花畑をつくり、インスタ映えやその草花を動物が食べるといった「循環」を作る。
    → 新たな観光資源の構築。
  • 休日の動物の活用をどうするか。
    → 自治体や河川協力団体等と連携した管理。
  • ダム流域は畜産が盛んな地域だったことから、飼育のノウハウを兼ね備えている農家が多い。農家やシルバー人材等を利用して、飼育や管理をお願いする。
    → 雇用の創出。
  • ヤギは、ヤギミルクの加工。ヒツジは、毛や肉の販売。ポニー(馬系)の糞は、マッシュルーム栽培に必要らしく、需要がある。三春町は、近年ブルーベリー栽培が盛んなため、肥料に利用する。糞を上手に乾燥できれば、燃料になる。
    → 商品の加工、販売。
  • ダム流域は、丘陵地が多く、高齢者も多いことから、休耕田等が多く、田畑の管理が難しくなってきている。
    → 動物のレンタル事業。
  • 丘陵地などでは、急な傾斜地で危険を伴う作業等がある。また、作業従事者の高齢化が垣間見える。
    → 作業従事者の安全確保や労働力不足の解消。

上記に記載した内容は、現実から見えてきた可能性であり、更に考えることで、「地域活性」や「地域連携」に向けたアイディアや可能性をまだまだ秘めていると思われます。

6.さいごに

三春ダムでは、今後も官民一体となり、地域全体を考えながら「地域活性化」に向けて事業を展開していきます。

近くに、お越しの際には、是非、ダムにお立ち寄りください。

■三春ダム管理所HP:https://www.thr.mlit.go.jp/miharu/
■X(旧Twitter)  :@mlit_miharu