ダム・水源地トピックス

水力王国「宮崎」 耳川水系で8つのダムカードを配布中!

2018.02掲載
九州電力株式会社
耳川水力整備事務所

 九州の南東に位置する宮崎県は九州山地への豊富な降水を水源とした河川が数多く流れています。古くから水力発電が盛んで、県北を流れる耳川水系でも戦前から水力発電用のダムが建設されてきました。近年のインフラツーリズムの高まりを受けて、耳川水系の流域市町村とダムを管理する九州電力ではダムを観光資源とした地域活性化の取り組みを協働で進めています。
 今回、昨年7月に耳川水系8ダム一斉に発行を開始した「ダムカード」を中心に、その取り組みについて紹介させていただきます。  

 
▲上椎葉ダム

 

1.耳川水系の水力発電

 耳川には7つの水力発電所があり年間発電量の合計は約9億kWhです。これは家庭が一年に使う電気の25万世帯分に相当し、九州電力における一般水力(揚水発電を除く水力発電)の2割程度を占める主要電源です。発電所の建設に合わせて戦前から戦後にかけて合計8基のダムが建設され九州の電力供給に寄与しています。


 


 

2.個性豊かな耳川水系のダム

 

 最初に耳川水系ダムを代表する上椎葉ダムを紹介します。上椎葉ダムは昭和30年に完成した日本初の本格的アーチ式ダムです。ダム愛好家主催のイベント「ダムアワード2016」において「放流賞」を受賞するなど全国的にも知名度・人気の高いダムです。
 
 塚原ダムは昭和13年完成の建設当時東洋一の大きさを誇った重力式ダムです。建設にあたっては中庸熱セメントを用いた低発熱の固練りダムコンクリートをつくるため、現場にバッチャープラントを設置し、ケーブルクレーンやバイブレーターを採用するなど近代化施工の先駆けとして、国の近代化産業遺産に指定され、万里の長城や中世の古城をイメージしたと言われる独特の意匠から有形文化財にも登録されています。また、コンクリートの材料は延岡市から40㎞の索道を用いて運搬し、この索道は延長しながら上流の岩屋戸ダム、上椎葉ダムの建設にも活用されました。
 
 諸塚ダムは九州唯一の中空重力式ダムです。建設当時貴重だったコンクリートの節約のために安定を確保しつつダム本体を中空にしたもので、複雑な構造のため今日では建設例はなく全国で13基に留まる珍しい型式のダムです。

 
▲上椎葉ダム ▲塚原ダム ▲諸塚ダム

その他のダムもそれぞれ様々な特色を有していますので簡単な表にまとめます。

 
ダム竣工年 ダム名 堤頂長(m) 堤高(m) 形式 備考
昭和4年 西郷さいごう 84.54 19.964 重力式 今年5月 ダム通砂対策工事竣工
昭和7 山須原やますばる 91.14 29.404 重力式 ダム通砂対策工事中
昭和13年 塚原つかばる 215.00 87.000 重力式 近代化産業遺産・登録有形文化財
昭和17年 岩屋戸いわやど 171.00 57.500 重力式 戦時中の竣工。塚原ダムの技術を継承
昭和30年 上椎葉かみしいば 341.00 110.000 アーチ式 日本初の本格的なアーチ式ダム
昭和31年 大内原おおうちばる 152.62 25.500 重力式 九州初のダム式発電所
昭和36年 諸塚もろづか 149.50 59.000 中空重力式 日本に13基の中空重力式ダム
昭和36年 宮の元みやのもと 87.436 18.500 アーチ式 日本で2番目に小さいアーチ式ダム


 
▲岩屋戸ダム ▲宮の元ダム ▲山須原ダム(完成イメージ)
 
▲西郷ダム(完成イメージ) ▲大内原ダム
 

3.耳川水系ダムカードの紹介

 
 
 

 耳川水系ダムカードは昨年7月の配布開始以降、12月末現在で約2,700枚を配布しています。耳川までのアクセスは良好ではないにも関わらず来訪者の約7割は県外から来られています。また首都圏など遠方からも多くの方に来訪いただいており、ダムカードが流域の観光活性化に寄与するきっかけに繋がることが期待されています。ダムは非常駐のためダムカードは地元の協力を得てダム近くの店舗等で配布中です。ダムを撮影し配布場所にて写真を提示いただくと、無料で一人一枚お渡しします。配布場所への行き方などは次をご覧ください。  

 
 
   
↑画像をクリックするとPDFで閲覧できます。



 

4.ダムを観光資源とした取り組み

 
 
▲上椎葉ダムカレー
  

 全国で人気のダムカレー、耳川でも昨年7月から提供が始まりました。先陣を切った椎葉村にある村営の物産センター「平家本陣」の「上椎葉ダムカレー(700円)」は発売開始以来好評のようです。ダムゲートにみたてたウインナーを持ち上げるとルーが流れるよう工夫され、地元の食材満載の逸品です。お近くへ来られた際はご賞味くださいませ。椎葉村以外の流域市町村でもダムカレーを試作中と聞いています。次は耳川のどこのお店でどのようなダムカレーが提供されるのか楽しみです。


 
 
上椎葉ダム湖クルージングの様子  提供:椎葉村観光協会
  
  

 また椎葉村観光協会では昨年秋に「上椎葉ダム湖クルージング」の名称で遊覧船の運航を試験的に行いました。女性に好評だったとのことで今年の春も実施される予定です。
   
 椎葉村観光協会HPはこちらから→http://www.shiibakanko.jp/ (なお2月時点では「上椎葉ダム湖クルージング」の案内は掲載されていません。)   

  
  
 

5.ダムを観光資源とした取り組み

 
 
 
▲平家祭り 提供:椎葉村 ▲日向ひょっとこ夏祭り ▲お倉ケ浜海岸 提供:日向市


 耳川水系の最上流に位置する椎葉村は、平家落人伝説が言い伝えられており、鶴富姫と那須大八郎の悲恋物語をもとに開催される「平家まつり」には多くの観光客が訪れます。また耳川最下流の日向市は「ひょっとこ」祭りが全国的に有名なほか、国内屈指のサーフポイントとして知られ、「サーフタウン日向」を掲げてまちづくりに積極的に取り組んでいます。
 椎葉村と日向市をつなぐ耳川、そしてそこに存在する歴史的なダムによって地域の観光につなげていけないかと考えています。

 
▲「平兵衛さんの会」塚原ダム見学の様子 ▲塚原ダム敷地内にある工事殉職者の慰霊碑
  

 最後に取り組みの一例として日向市の観光ボランティアガイドの会「平兵衛さんの会」によるダム見学会を紹介します。日頃から日向市の様々な名所を案内している観光ガイドの方々を普段は関係者以外入れない数か所のダム構内に案内し、それぞれのダムの歴史を中心とした説明を行いました。ダム関連の歴史や建設時の状況を案内できるパンフレットや写真をガイドさんらと共有化し、観光案内を魅力的なものとして、よりよいダムツアーの開催を応援していきたいと思っています。
  
 これらの取り組みによってより多くの方が耳川に来られることを私どもも楽しみにしています。

  

以 上


耳川水系8ダムは、国土交通省の「ダムコレクション」と言うサイトにも取り上げられてます。
 ・ダムツアールート紹介 No.17…耳川水系ダムロード